下記の一覧表は特殊で難解な東洋医学用語、漢方用語並びに現在漢方医学の基礎を作られ、漢方医学の発展に
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わ | ら | や | ま | は | な | た | さ | か | あ |
り | み | ひ | に | ち | し | き | い | ||
る | ゆ | む | ふ | ぬ | つ | す | く | う | |
れ | め | へ | ね | て | せ | け | え | ||
ろ | よ | も | ほ | の | と | そ | こ | お |
か行 | ||
名称 | 解説 | |
火(か) | 火は天の気と地の気の組み合わせによって出来た陽気が激しい熱 に変わった物をこう言います。 火は外火と内火に分けられ、外火は主に外邪から影響を受けた 熱症状を指します。 内火は五志に含まれる怒りや興奮、神経過敏、内蔵機能亢進などが原因で 身体内部から起こる火を指します。 参考・・・外火と内火は実火に属し、体内の陰液が不足し陽気と陰液の バランスが崩れた時に診られる虚火もあります。 |
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外因 (がいいん) |
外因は外部からの影響や侵入が原因で起こる病気を言います。 外因の原因にウイルス、細菌、暑さ、寒さ、湿度、放射能、 公害物質など体外から来る病因(外邪)が挙げられます。 外因は主に気・血に影響を与え、気・血との関係をアンバランス 状態にします。 このアンバランス状態が続けば身体内部の気・血・水の バランスが崩れて未病が現れ、やがて病気を発病します。 参考・・・外因の他に内因、不内外因があります。 余談・・・外因、内因、不内外因の言葉を最初に使ったのは 南宋時代に活躍した漢方医の陳言です。 陳言は病気の原因(外因、内因、不内外因)を脈診から 突き止めて治療を行いました。 この事については陳言の有名な著作物に「三因極一病証方論」 (別名 三因方)に詳しく解説されています。 |
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外火 (がいか) |
外火は外部から病邪の体内侵入による熱病をこう言います。 参考・・・外火の反対は内火と言い、外火も内火も実火 に属します。 |
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外感 (がいかん) |
外感は気候、季節、環境の急激な変化や外邪、六淫が原因で 起こる病気を指します。 参考・・・外感は外部からの攻撃で病気になることを外感と言いますが 精神的疲労、肉体的疲労、ストレス、暴飲暴食、不摂生などが原因で 病気になることを内傷と呼びます。 昔から「外感を治療するには張仲景の著作物の「傷寒論」、 「金匱要略」に従って治療を行うとよい。」と言われています。 又、「内傷を治療するには李東垣の著作物の「脾胃論」、 「内外傷弁惑論」に従って治療を行うとよい。」 言われています。 しかし、日本で興った古方派の一部の人の考えでは外感も 内傷も「傷寒論」、「金匱要略」で治療できると考えた人が いました。 「内外傷弁惑論」に「内傷熱病」と「外感熱病」について詳しく 書かれており、「外感熱病」には攻邪を用いて治療し、 「内傷熱病」には補剤を用いて治療をするとしております。 |
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がい(※)瘧 (がいぎゃく) (※ガイ=ヤマイダレ +亥) |
ガイ瘧は激しい悪寒の後に発熱が現れ、それを繰り返す 症状をこう呼びます。 瘧は主にインフルエンザ、マラリア、重い風邪症状、 腎盂炎、肺炎などを指します。 瘧の一般的症状は ① 激しい悪寒(悪寒戦慄)が起こる。 ② 身体痛(主に腰、背中が痛む) ③ やがて悪寒が止んで38度以上の発熱、頭痛、口渇などの 症状が現れ、その症状を繰り返します。 以上が瘧に診られる症状ですが、悪寒は無いが発熱がある、 発熱は余り無いが悪寒がひどいなどの症状も診られます。 瘧にはタン瘧、温瘧、牡瘧、寒瘧、牝瘧、労瘧、瘧母があり、 症状によって分類もそれぞれ異なります。 参考・・・ガイ瘧は別名で「瘧」、「おこり」、「瘧疾」、 「間歇熱」とも言います。 |
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カイ(※)厥 (かいけつ) (※)カイ= (虫+尤) |
カイ厥は回虫が原因の手足の指先からの冷えを こう言います。 かい厥に用いられる漢方処方は烏梅丸(烏梅円) を用います。 参考・・・カイ(虫+尤)厥は別の名前で 回厥、蛔厥(かいけつ)とも書かれます。 |
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外邪 (がいじゃ) |
外邪は主にインフルエンザ、腸チフス、赤痢、コレラ、 天然痘、風邪などのウイルスや湿度、高温度、低温度などの 気象現象、アレルギー物質、公害物質が外邪と呼ばれます。 東洋医学で外邪と呼ばれるのは「風邪」、「寒邪」、 「暑邪」、「湿邪」、「燥邪」、「火邪」、「疫癘」 が外邪と呼ばれます。 傷寒論では「外邪の侵入が強い場合は「傷寒」と呼ぶ。」 と書かれており、「外邪が弱い場合は「中風」と呼ぶ。」 と書かれています。 参考・・・傷寒論 太陽病上篇に 「太陽病、或已發熱、或未發熱、必悪寒、體痛、嘔逆、 脈陰陽倶緊者、名日傷寒。」 「太陽病で発熱がある場合とまだ発熱が無い場合があり、 悪寒があり、身体痛、繰り返す嘔吐があり、脈は陰陽共に緊の人 の病気を傷寒と呼びます。」と記載されています。 同じく傷寒論 太陽病上篇に 「太陽病、發熱汗出、悪風脈緩者、名爲中風。」 「太陽病で発熱、発汗があり、緩脈の人の病気は 中風と呼びます。」と記載されています。 |
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貝原益軒 (かいばらえきけん) |
貝原益軒(1630年生まれ~1714年没) 貝原益軒は筑前国(現在の福岡県)黒田藩で福岡藩士の子として 生まれ、黒田藩の藩医、本草学者です。 貝原益軒の著書として「養生訓」、「大和本草」などがあり、 大和本草は日本の薬用植物に関する観察と研究が細かく 書かれています。 養生訓は人生の楽しみ方として長生きをする方法、病気になりにくい 方法などが書かれています。 |
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火邪 (かじゃ) |
火邪は「風邪」、「湿邪」、「暑邪」、「燥邪」が侵入し、 体内で熱に変化した時に現れる症状を言います。 火邪の症状は高熱、口渇、顔面紅潮、譫語などの陽明病期に 見られる症状が出ます。 参考・・・火邪は別名で熱邪とも呼ばれます。 火邪(熱邪)の他にも「風邪」、「暑邪」、「湿邪」、 「燥邪」、「寒邪」、「疫癘」などがあり、これらを総じて 「邪気」、「外邪」、「六淫」と言います。 参考・・・火邪は症状によって実火と虚火に分けられます。 |
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咳嗽 (がいそう) |
咳嗽は咳全般を言います。 咳嗽の種類は乾咳、湿咳、喘鳴を伴う咳などがあります。 |
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霍乱 (かくらん) |
霍乱は突然の激しい嘔吐、下痢、発熱、悪寒などの症状が 診られる病気をこう言います。 霍乱を現代の病名で言えば急性腸炎、マラリア、コレラ、 日射病、熱中症、暑気あたり、しょくあたり、赤痢などの 病気が霍乱に当てはまります。 参考・・・傷寒論、霍乱病脈証に 「問曰 病有霍乱者何?答曰 嘔吐而利、此名霍乱。」 「師匠に問います。病に霍乱がありますがこれはなんですか? 師匠曰く嘔吐、下痢がある病をを霍乱と言います。」 「問曰 病発熱頭痛、身疼悪寒、吐利者、此属何病? 答曰 此名霍乱。霍乱自吐下、又利止、復更発熱也。」 「師匠に問います。 発熱、頭痛、悪寒、嘔吐、下痢が ある病は何の病ですか? 師匠曰く病名を霍乱と言います。霍乱には激しい嘔吐、 下痢があり、下痢が止まらず、発熱もあります。」 と記載されています。 |
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加減方 (かげんほう) |
加減方は漢方処方にある生薬を増やしたり、漢方処方に 元々含まれている生薬を減少、取り除いたりする方法を こう言います。 参考・・・私がお世話になっております先生は、 ある漢方処方にヨクイニンを加えたり、乙字湯に含まれる 大黄の量を増やしたり、減少したり、取り除いたり、 大黄の代わりに重薬を加えたりします。 |
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瘡 (かさ) (くさ) (そう) |
瘡には2種類の意味があります。 ①・・・皮膚に出来る湿疹、出来物、ただれ、腫れ物などの 皮膚病全般や傷が癒える時に出来るかさぶたを言います。 瘡は特に乳幼児の顏、頭に出来る皮膚病を指す場合が多いです。 ②・・・昔は梅毒を瘡と言いました。 参考・・・瘡は別の呼び方で「そう」、「くさ」とも言われます。 |
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滑(脈) (かつみゃく) |
滑脈は血液がサラサラ状態で、血管内をなだらかに流れており 脈拍が速い脈を言います。 この脈は裏熱証に見られます。 滑(脈)の反対は渋脈、しょく(さんずい+嗇)脈です。 参考・・・傷寒論、辨脈で 「問曰 脈有陰陽、何謂也? 答曰 凡脈大浮数動滑、此名陽也。 脈沈渋弱弦微、此名陰也。」 「脈に陰証、陽証がありますか? 脈には大、浮、数、動、 滑脈があり、これらの脈は陽証に診られます。脈で沈、渋、弱、弦、 微脈は陰証に診られます。」と記載されています。 |
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滑疾(脈) (かっしつみゃく) |
滑疾脉は滑脈より脈拍が速い脈を言います。 参考・・・滑疾脈は脈滑疾とも呼ばれます。 |
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からえずき | からえずきは「げー」と言う吐き気があるが、口から嘔吐物が 出ない嘔吐感を言います。 からえずきに用いられる漢方処方は小半夏加茯苓湯、五苓散 などがあります。 参考・・・からえずきは別名で乾嘔とも言います。 |
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寒 (かん) |
寒は発病後に身体機能が低下し、顔が青白い、尿の回数、 量が多い、下痢、身体が冷える、沈遅脈、遅弱脈などの 症状が見られます。 寒には附子、乾姜、人参など温薬、熱薬が配合された 附子理中湯、人参湯、真武湯などが用いられます。 |
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疳 (かん) |
疳は3種類の意味があります。 ①・・・昔は小児の体内に疳の虫がいる言われ、その疳の虫が 原因で夜鳴き、自家中毒、チック病などの症状がある神経質な 小児を指します。 ②・・・慢性疾患によって痩せ衰え、津液が不足し、腺病質で 虚弱な小児を指します。 ③・・・昔は口中内に虫がいるとされ、その虫の侵食が原因と 考えられた病気を指します。(例 虫歯、歯槽膿漏、口内炎など) |
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乾嘔 (かんおう) |
乾嘔は「げー」と言う吐き気があるが、口から嘔吐物が出ない 嘔吐感を言います。 乾嘔に用いられる生薬は吐き気を抑える半夏や生姜、乾姜が 用いられます。 漢方処方は半夏や生姜、乾姜が配合された小半夏加茯苓湯、 五苓散、小青竜湯などが用いられます。 参考・・・乾嘔は別名でからえずきとも言います。 |
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乾咳 (かんがい) |
乾咳は乾いたような咳、痰が伴わない咳、口や喉の奥に 乾燥感を伴う咳をこう言います。 参考・・・痰が伴う咳は湿咳と言われます。 乾咳に用いられる生薬は地黄、麦門冬などの滋潤作用のある 生薬を用い、漢方処方は地黄が配合された滋陰降火湯、麦門冬が 配合された麦門冬湯等が用いられます。 参考・・・乾咳の初期に滋潤作用の無い麻黄が配合された 葛根湯、麻黄湯、小青竜湯などを用いる場合もあります。 |
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寒瘧 (かんぎゃく) |
寒瘧は大塚敬節先生の書物によれば「寒瘧は悪寒が強くて 熱感がないか、熱感の少ない場合を言います。」 と記載されています。 参考・・・牝瘧は寒瘧と同じ症状を言います。 |
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緩下剤 (かんげざい) |
緩下剤は峻下剤より効用がマイルドな薬物を言います。 薬草では重薬、決明子がこれに当てはまります。 参考・・・緩下剤は峻下剤のように胃、小腸に影響を与える ので無く大腸のみに影響を与えるので栄養吸収を妨げること はありません。 |
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寒厥 (かんけつ) |
寒厥は手足の指先から冷えが生じて身体が冷感を感じるが、 冷感が表部にあるので症状が余り重くない場合をこう言います。 寒厥に用いられる生薬は温薬を用い、温薬が配合された 当帰四逆湯や四逆湯が用いられます。 参考・・・寒厥より冷えが重い症状は厥、厥冷、厥逆と 言います。 寒厥は別名で厥寒とも言います。 寒厥の反対は熱厥です。寒厥症状によく用いられる処方は 四逆湯です。 熱厥症状には四逆散を用います。 |
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間歇熱 (かんけつねつ) |
間歇熱は激しい悪寒の後に発熱が現れ、それを繰り返す症状を こう言います。 おこりは主にインフルエンザ、マラリア、重い風邪症状、 腎盂炎、肺炎などを指します。 間歇熱の一般的症状は ① 激しい悪寒(悪寒戦慄)が起こる。 ② 身体痛(主に腰、背中が痛む) ③ やがて悪寒が止んで38度以上の発熱、頭痛、口渇などの 症状が現れ、その症状を繰り返します。 参考・・・間歇熱を東洋医学では「瘧疾」、「瘧」、 「おこり」、「ガイ瘧」とも呼んでいます。 |
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寒剤 (かんざい) |
寒剤は身体を冷やす作用のある生薬を言います。 寒剤の代表的な生薬は石膏、大黄、芒硝、黄連、黄ゴン、 天門冬、防己、竜胆などの生薬です。 参考・・・寒剤の反対が温剤、熱剤です。 |
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疳瀉 (かんしゃ) |
疳瀉はやせ衰え、消化不良、下痢などが見られる症状を 指します。 疳瀉は小児に良く見られます。 |
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寒瀉 (かんしゃ) |
寒瀉は寒邪が脾胃にあって裏寒、腹痛を伴う下痢などの症状が 診られる場合をこう言います。 寒瀉には附子、乾姜、人参など温薬、熱薬が用いられます。 漢方処方では温剤、熱剤配合の人参湯、附子理中湯、真武湯、 桂枝人参湯、附子粳米湯などが用いられます。 参考・・・寒瀉の反対は熱瀉です。 |
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寒邪 (かんじゃ) |
寒邪は長時間「寒」に触れていたり、平素から冷え症の人が 「寒」に触れたり、夏場でも雨、汗、クーラーの冷気に長時間 触れたりする事で寒邪に侵されます。 胃腸に寒邪があれば腹痛、下痢、嘔吐などの症状が 診られます。 腎臓、膀胱に寒邪があれば頻尿の症状が診られ、 皮膚、骨、筋肉、神経に寒邪があればしもやけ、神経痛、 関節痛、身体の冷え等の症状が診られます。 寒邪の他にも「風邪」、「暑邪」、「湿邪」、「燥邪」、 「火邪」、「疫癘」などがあり総じて「邪気」、「六淫」、 「外邪」と呼ばれています。 参考・・・寒邪は「風邪」を伴う事が多いです。 |
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寒証 (かんしょう) |
寒証は寒邪、特に陰邪が体内に侵入し陰邪の勢いが強い場合に 診られる寒冷症状をこう言います。 寒証で診られる症状は悪寒、下痢又は軟便、頻尿、手足の冷え、 咳、痰、鼻水、顔面蒼白等が診られます。 寒証には当帰、乾姜、生姜、附子、呉茱萸などの温剤、熱剤 が配合された人参湯、附子理中湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、 四逆湯などが用いられます。 参考・・・寒証の反対は熱証です。 |
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関上 (かんじょう) |
関上は手首関節部分にある寸口脈に手を当て脈診を取るときに 人差し指を置く場所を寸口と呼び、中指を置く場所を関上と呼び、 薬指を置く場所を尺中と呼びます。 寸口、関上、尺中を略して寸関尺と呼びます。 |
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寒疝 (かんせん) |
寒疝は寒が原因で腹が冷えて痛む病気を指します。 寒疝の原因は寒冷(冬の寒さ、冷房器具など)の場合と冷たい 飲食物が原因に挙げられます。 参考・・・金匱要略 腹満寒疝宿食病脈証并治篇に 「腹痛、脈弦而緊、弦則衛気不行、即悪寒。緊則不欲食、 邪正相搏、即為寒疝」 「腹痛があり、その時の脈は弦脈か緊脈で、弦脈の場合は 衛気の巡りが悪くなり悪寒が診られます。 緊脈の場合は食欲不振、病邪が体内を叩いて痛みを起こしている ような感じがあります。それは寒疝の為です。」 と記載されています。 参考・・・金匱要略より後の漢方医が寒疝の病を細かく分類し、 「疝」という病名を作りました。 |
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疳瘡 (かんそう) |
疳瘡は性病、特に梅毒による陰部のただれ、炎症、腫れ物、潰瘍 などの症状をこう言います。 疳瘡は別名で「下疳」とも言われます。 |
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汗吐下法 (かんとげほう) |
汗吐下法は古来より行われている基本的漢方治療方法です。 汗吐下法の「汗法」は発汗させる。 汗吐下法の「吐法」は吐き出させる。 汗吐下法の「下法」は下す。 を意味し、各病状によって治療方法が異なります。 汗吐下法は三陽病期に用いられます。 最初に病邪の進行が余り進んでいない状態、つまり太陽病には 桂枝湯、麻黄湯などの発汗剤(汗法)が用いられ、 病邪が少し内部に進んだ病態では瓜蔕散、走馬湯などの 催吐剤(吐法)を用い、病邪が内部深く進行した陽明病には 大承気湯、桃核承気湯、三黄瀉心湯、茵チン蒿湯などの 瀉下剤(下法)を用います。 参考・・・汗吐下法に和法、温法を加えた汗吐下和温法や 汗吐下和清温法に消法、補法を加えた汗吐下和温消補法 があります。 参考・・・汗吐下法を広く活用した漢方医として劉完素、 張従正がいます。 この二人はこの方法を治療の主体として実行しており、 この汗吐下法の治療方法は江戸中期の古方派に大きな影響を 与えました。 余談・・・私は瓜蔕散、走馬湯などの催吐効果のある頓服薬 は使用したことが ありません。 (催吐法は日本漢方では余り用いられない方法です。 しかし昔は大変重要な治療方法だった思われます。 催吐法は現代医学が行う胃内部洗浄と同じ効果あると 思われます。) |
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汗吐下和法 (かんとげわほう) |
汗吐下和法は古来より行われている基本的漢方治療方法です。 汗吐下和法の「汗法」は発汗させる。 汗吐下和法の「吐法」は吐き出させる。 汗吐下和法の「下法」は下す。 汗吐下和法の「和法」は中和する。 を意味し、各病状によって治療方法が異なります。 汗吐下和法は三陽病期に用いられます。 最初に病邪が表証にある状態、つまり太陽病には桂枝湯、 麻黄湯などの発汗剤(汗法)が用いられ、病邪が外部と内部の 中間にある状態、つまり少陽病には小柴胡湯、柴胡桂枝湯、 大柴胡湯などの中和剤(和法)が用いられ、病邪が少し内部に 進んだ病態では走馬湯、瓜蔕散などの催吐剤(吐法)を用い、 病邪が内部深く進行した状態(裏証)、つまり陽明病には大承気湯、 桃核承気湯、三黄瀉心湯、茵チン蒿湯などの瀉下剤(下法) を用います。 参考・・・汗吐下和法に温法を加えた汗吐下和温法や 汗吐下和清温法に消法、補法を加えた汗吐下和温消補法 があります。 余談・・・私は走馬湯、瓜蔕散などの催吐効果のある頓服薬は 使用したことがありません。 (催吐法は日本漢方では余り用いられない方法です。 しかし昔は大変重要な治療方法だった思われます。 催吐法は現代医学が行う胃内部洗浄と同じ効果があると 思われます。) |
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汗吐下和清温消補法 (かんとげわせい おんしょうほほう) |
汗吐下和清温消補法は古来より行われている漢方治療方法で 汗吐下法に和法、清法、温法、消法、補法を加えた 治療方法です。 参考・・・一般的には汗吐下法、汗吐下和温法が有名で、 他に理血法、理気法、除湿法(去湿法)、去痰法などの 治療方法があります。 |
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汗吐下和温法 (かんとげわおん ほう) |
汗吐下和温法は古来より行われている漢方治療方法で汗吐下法に 和法、温法を加えた治療方法です。 参考・・・一般的には汗吐下法、汗吐下和温法が有名で、 他に理血法、理気法、除湿法(去湿法)、去痰法などの 治療方法があります。 |
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寒熱 (かんねつ) |
寒熱には色々な意味があります。 寒は・・・悪寒、悪風などは病邪に感染したときに診られる寒。 表寒、裏寒などは病邪の進行場所を提示している寒。 熱は・・・発熱や実熱などの熱症状を表しています。 |
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寒熱往来 (かんねつ おうらい) |
寒熱往来は太陽病期の悪寒と発熱の症状から少陽病期に 病邪が移行した時に診られる症状で、 例えば朝に悪寒がして体温が上昇するが、昼には悪寒が止み、 発汗がおこり、やがて解熱があるが、翌日には前日と同じ症状が 起こり悪寒と発熱が交互に繰り返され、やがて陽明病期 に入ります。 寒熱往来の症状には柴胡剤が良く用いられ、特に柴胡剤配合 の小柴胡湯、柴胡桂枝湯が一般的によく用いる漢方処方です。 参考・・・寒熱往来は別名で往来寒熱とも言います。 |
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肝斑 (かんばん) |
肝斑は皮膚、特に顔面に出来る褐色の色素変化物(しみ) をこう言います。 肝斑は成人女性によく診られます。 |
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寒痺 (かんひ) |
寒痺は参考・・・素問 痺論篇に 「風寒濕三氣雜至、合而爲痺也。寒氣勝者、爲痛痺。」 「痺は風、寒、湿3種類の気が交じり合って起こる物です。 その中で寒が勝っている場合に痛痺が診られます。」 と記載されており、寒痺は風痺のように痛みが移動せずに1箇所に 留まり、その冷えが強まると痛みが増大します。 寒痺の症状に用いられる漢方処方は当帰、川キュウ、附子 などの生薬が用いられ、漢方処方では当帰、川キュウ、附子 などの生薬が配合された疎経活血湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、 桂枝加苓朮附湯などがよく用いられます。 痺論には寒痺の他に風痺、湿痺が記載されています。 寒痺は別名で痛痺とも呼ばれます。 |
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汗法 (かんほう) |
汗法は病邪の進行が余り進んでいない状態、 つまり表証(太陽病)の症状の時に発汗剤が配合された漢方処方 を用いて治療する方法です。 汗法でよく用いられる生薬は桂枝、葛根、麻黄など発汗剤が 用いられ、漢方処方はこれら発汗剤が配合された桂枝湯、 麻黄湯、葛根湯などが用いられます。 参考・・・汗法の他に吐法、下法がありこれらを総じて 汗吐下法と呼び、汗吐下法に和法、温法を加えて汗吐下和温法と 呼んだり、汗吐下和温法に清法、消法、補法を加えた 汗吐下和清温消補法があります。 汗法は別名で発汗法とも言われます。 汗吐下和清温消補法を簡単に書けばこのように 表現が出来ます。 「汗法は発汗剤を用いて病邪を追い出す。」 「吐法は催吐剤を用いて病邪を吐かせる。」 「下法は瀉下剤を用いて病邪を下す。」、 「和法は中和剤を用いて体内の病邪を中和する。」 「清法は清熱剤を用いて体内の熱を清める。」 「温法は温補剤を用いて弱った身体を温める。」 「消法は消導剤を用いて食滞を消します。」 「補法は補益剤を用いて免疫力を高めます。」 |
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漢方 (かんぽう) |
漢方は古代中国の漢の時代に体系化された中国医学が 日本に伝わり、江戸時代中期にヨーロッパより伝わった 西洋医学を「蘭方」と呼び、「蘭方」と日本で育った日本独自の 医学との区別をつける為に日本の伝統医学を「漢方」 と呼びました。 日本に中国医学が伝わったのはおそらく奈良時代であると 言われ、中国医学は大変複雑で難解な理論と哲学を唱えており、 最初は日本人もこの教えを忠実に守っていましたが、 江戸時代にこの難解な理論よりも実践的な処方を用いて 効果を出すべきである。と言う考えが一般的になりました。 漢方処方も日本的に改良されました。改良した部分は、 ①日本に生息する生薬を用いる漢方処方を考案しました。 ②中国漢方のように大量の生薬を使用せず、必要最低限の 生薬を使用した漢方処方に切り替えたりしました。 ③診断方法、漢方用語、漢方処方の簡素化を図りました。 現に日本で用いられている漢方処方と中国で用いられている 漢方処方が共通する処方は全体の30%にすぎないと言われます。 |
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韓方医学 (かんぽういがく) |
韓方医学は現代の韓国で行われている韓国の伝統医学を 指します。 韓方医学は中国漢方、日本漢方とは多少異なります。 |
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緩(脈) (かんみゃく) |
緩脈は緩やかなおっとりした脈で、脉は陽証や陰証のどちらにも 属すような脈を言います。 緩脈は病状が快方に向かっている時や病状が軽い時に 診られる脈です。 緩脈の反対は緊脈です。 参考・・・傷寒論 辨脈で 「陽脈浮大而濡、陰脈浮大而濡、陰脈与陽脈同等者、名曰緩也。」 陽証の浮大脈で滞りなく流れるような脈、陰証の浮大脈で 滞りなく流れるような脈は陰証、陽証の区別無く皆同じです。 名前は緩脈と言います。」と記載されています。 |
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関(脈) (かんみゃく) |
関脈は手首関節部分にある寸口脈に手を当て脈診を取るときに 中指を置き脈を取る場所をこう言います。 参考・・・関脉の他に尺脈、寸脈があります。 |
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寒薬 (かんやく) |
寒薬は身体を冷やす作用が強い生薬を言います。 寒薬の代表的生薬は石膏、黄連、大黄、黄ゴン、天門冬、防己、 芒硝、竜胆などの生薬です。 参考・・・寒薬より効用が弱い生薬を涼薬と言います。 寒薬の反対は熱薬です。 |
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漢蘭折衷派 (かんらんせっ ちゅうは) |
漢蘭折衷派は後世派と古方派の長所を組合わせた折衷派と 当時の最先端医療のオランダ医学(蘭学)を組み合わせ、 新しい医学を興そうとした人々が漢蘭折衷派と 呼ばれています。 参考・・・漢蘭折衷派の代表的な人物として永富独嘯庵、 華岡青洲などが挙げられます。 |
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寒涼派 (かんりょうは) |
寒涼派は金元四大家の劉完素(劉河間)の教えを治療行為に 用いる一派をこう言います。 寒涼派は火と熱が病気の原因と考え、火と熱を冷やす寒剤と 涼剤を多く用いたのでこう呼ばれます。 寒涼派がよく用いた漢方処方は防風通聖散です。 |
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き行 | ||
名称 | 解説 | |
氣(気) (き) |
気とは形を伴わず、又眼には見えないものです。 しかし、人間が呼吸をする、日光を浴びるなどにより 「天の気」を体内に取り入れ、人間が飲食物を摂取する事により 「地の気」を体内に取り入れ、「天の気」、「地の気」両方の気が 組み合わされ、全身に行き渡る事により精神神経の安定を図り 循環器系、消化器系器官の機能更新、気力、体力の向上を 図るとする漢方理論です。 気がうまく体内で活動すれば「気力」がつき「元気」 になります。 しかし気が体内で滞れば「気力」がなくなり「病気」 になります。 気の症状は「気の鬱滞」、「気の上衝」、「気急」、「気虚」 などが挙げられ、気の症状の改善薬として理気剤が 用いられます。 参考・・・「傷寒論」、「金匱要略」などの中国漢方には 「気・血・水」理論は無く、「気・血・水」理論は日本の 江戸時代中期に活躍した漢方医「吉益南涯」が考えた 漢方理論です。 中国漢方は病邪に感染した身体状態や病邪自体を、 陰陽、虚実、表裏、寒熱などに置き換えて有効な漢方処方を 考えていました。 又内臓も「五臓六腑理論」{(五臓・・肝臓、心臓、脾臓、 肺、腎臓)が陽で、六腑・・胆嚢、小腸、大腸、胃、 膀胱、三焦)が陰}に置き換えていました。 後「五行説」(火・水・木・金・土)も内臓に当てはめて 考えていました。 やがて日本に中国漢方が伝わり、江戸時代の漢方医吉益南涯は この複雑な中国式漢方理論を簡素化し、より実践的な 「気・血・水」理論を創案し傷寒論、金匱要略の解釈と しました。 |
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気鬱 (きうつ) |
気鬱は精神的ストレスや過労などで「氣」の低下と 「気」の異常が診られる症状を言います。 気うつの症状は「身体がだるい」、「1日中眠い」、 「食欲が無い」、「朝が憂鬱」、「やる気、気力が無い」、 「不安感がある」、「喉に何かがあるような感じがする」 「呼吸困難の感じがする」などの症状がある人が気鬱症状に 当てはまります。 気鬱症状に良く用いられる漢方処方に厚朴、竜骨、牡蠣、 紫蘇葉、香附子などの生薬が配合された半夏厚朴湯、柴朴湯、 平胃散、竜骨湯、香蘇散、帰脾湯などがあり、 他に柴胡加竜骨牡蠣湯、加味逍遙散、釣藤散も気鬱症状に 用いられます。 後、補気剤を配合した人参湯、四君子湯、六君子湯、 補中益気湯なども用いられます。 参考・・・気鬱症状の反対は気逆症状です。 |
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気逆 (きぎゃく) |
気逆は本来なら全身に回らないといけない「氣」が逆流して 身体の上部に上昇しのぼせ、イライラ感、頭重、頭痛、不安感、 動悸等の症状をおこします。 気逆症状では気が下半身に流れない為に「血」の流れも悪くなり、 下半身特に足が冷たくなります。 これを俗に「冷えのぼせ」と言います。 気逆症状に良く用いられる漢方処方に桂枝、竜骨、牡蠣が 配合された桂枝湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、桃核承気湯などがあり、 他に三黄瀉心湯、黄連解毒湯、抑肝散なども気逆症状に 良く用いられます。 参考・・・気逆症状の反対は気鬱症状です。 参考・・・気逆は別名で気の上衝と言います。 |
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気急 (ききゅう) |
気急は呼吸が早くなる事を言います。 | |
気虚 (ききょ) |
気虚は精神的ストレスや過労、病気などで消化吸収機能、 基礎体力が低下し、「氣」が身体全体に廻らなくなる時に 診られる症状です。 気虚の症状は「身体がだるい」、「1日中眠い」、 「食欲が無い」、「朝が憂鬱」、「やる気、気力が無い」、 「軟便か下痢が続く」等の症状が診られます。 気虚に良く用いられる漢方処方は人参、黄耆、半夏、陳皮、 白朮などが配合された補中益気湯、人参湯、四君子湯、 六君子湯など補気剤と言われる処方が気虚に用いられます。 後、四逆散も用いられます。 参考・・・気虚と気鬱はよく似た症状がでますが、用いる 漢方処方は異なります。 |
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喜唾 (きだ) |
喜唾は何度も口内に唾が溜まり、それを何度も吐き出すことを こう言います。 喜唾に用いられる生薬は人参、白朮が用いられ、人参を配合した 漢方処方では人参湯が用いられます。 参考・・・薬徴の白朮の説明(喜唾についての記述あり。) 薬徴「主利水也。故能治小便自利、不利。旁治身煩疼、痰飲、 失精、眩冒、下利、喜唾。」 「白朮は体内の水分調整に用いられる。症状として小便の回数が 多い、小便の量が多い、小便が出にくい等を治療します。 他にも身体の煩わしい痛み、痰の絡む咳、夢精、頭が重く感じる頭痛、 下痢、口の中に溜まる唾なども治療します。」 |
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気滞 (きたい) |
気滞は全身に巡らなければいけない気が滞る状態を 言います。 気滞の症状はイライラ感、気分の高揚、怒りっぽい、 抑うつ感、食欲不振、気分の落ち込み、胃腸疾患等の様々な 症状を起こします。 気滞症状を改善させる生薬に香附子、厚朴、陳皮、竜骨、 牡蠣、桂枝などがあり、これら生薬が配合された漢方処方は 桂枝加竜骨牡蠣湯、半夏厚朴湯、抑肝散などが気滞症状を 改善します。 参考・・・気滞症状には気鬱症状と気逆症状の2種類 があります。 |
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吃逆 (きつぎゃく) |
吃逆はしゃっくりを指します。 参考・・・吃逆は別名で口+歳(えつ)、口+歳逆(えつぎゃく) とも言われます。 |
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気の鬱滞 (きのうったい) |
気の鬱滞は天の気、地の気が身体全体を巡らなくなり、 気が上衝や気鬱などの症状が興ると病気が起こるとする 漢方理論です。 参考・・・気の鬱滞は別名で滞気とも言われます。 |
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気の上衝 (きのじょうしょう) |
気の上衝は本来ならば全身を巡らないといけない気が 身体全身に巡らずに上部(頭部)のみに巡る状態を 言います。 気の上衝の症状は興奮、のぼせ、冷えのぼせ、ほてり、 めまい、イライラ、不安、不眠、動悸、頭痛などの症状が 診られます。 気の上衝に良く用いられる漢方処方に桂枝、竜骨、牡蠣 が配合された桂枝湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、桃核承気湯などがあり、 他に三黄瀉心湯、黄連解毒湯、抑肝散なども気の上衝の症状に 良く用いられます。 参考・・・気の上衝は別名で氣逆と言われます。 |
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岐伯 (きはく) |
岐伯(生まれ~没不明) 岐伯は古代中国の書物の黄帝内経に出てくる伝説の人物です。 黄帝内経の「素問」と「「霊枢」に黄帝が臣下で医師の 岐伯に質問をして岐伯が答える問答形式が多数見られます。 参考・・・黄帝の臣下は岐伯の他に伯高、雷公、少兪、 少師がおり、「素問」と「霊枢」では黄帝と岐伯、伯高、雷公、 少兪、少師との問答が見られますが、「素問」と「霊枢」の 両方に見られる人物は黄帝と岐伯だけです。 余談・・・岐伯は黄帝の質問に適切な答えをしていますが、 素問の著至教論や示従容論で雷公は黄帝の質問に 「自分はまだ勉強不足です。」と言ったり、黄帝に 「私に質問をして勉強をしろ。」などと言われたりしています。 |
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既病 (きびょう) |
既病は発病した病をこう言います。 参考・・・既病の反対は未病です。 余談・・・既病の用語が初めて見られたのは黄帝内経で 「聖人は既病を治すのではなく、未病を治す」 と記載されています。 |
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瘧 (ぎゃく) |
瘧は激しい悪寒の後に発熱が現れ、それを繰り返す症状を こう呼びます。 瘧は主にインフルエンザ、マラリア、重い風邪症状、腎盂炎、 肺炎などを指します。 瘧の一般的症状は ① 激しい悪寒(悪寒戦慄)が起こる。 ② 身体痛(主に腰、背中が痛む) ③ やがて悪寒が止んで38度以上の発熱、頭痛、口渇などの 症状が現れ、その症状を繰り返します。 以上が瘧に診られる症状ですが、悪寒は無いが発熱がある、 発熱は余り無いが悪寒がひどいなどの症状も診られます。 瘧にはタン瘧、温瘧、牡瘧、寒瘧、牝瘧、労瘧、瘧母があり、 症状によって分類もそれぞれ異なります。 参考・・・瘧は別名で「おこり」、「瘧疾」、「ガイ瘧」、 「間歇熱」とも言います。 余談・・・・司馬遼太郎先生の代表作の「竜馬がゆく」に 主人公の坂本竜馬が「おこり」を発病してガタガタ震えている 場面があります。 司馬先生も小説の中で南国高知では「おこり=マラリア」に かかる人が多いと書かれています。 |
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瘧疾 (ぎゃくしつ) |
瘧疾は激しい悪寒の後に発熱が現れ、それを繰り返す症状を こう呼びます。 瘧疾は主にインフルエンザ、マラリア、重い風邪症状、腎盂炎、 肺炎などを指します。 瘧疾の一般的症状は ① 激しい悪寒(悪寒戦慄)が起こる。 ② 身体痛(主に腰、背中が痛む) ③ やがて悪寒が止んで38度以上の発熱、頭痛、口渇などの 症状が現れ、その症状を繰り返します。 以上が瘧疾に診られる症状ですが、悪寒は無いが発熱がある、 発熱は余り無いが悪寒がひどいなどの症状も診られます。 瘧疾にはタン瘧、温瘧、牡瘧、寒瘧、牝瘧、労瘧、瘧母があり、 症状によって分類もそれぞれ異なります。 参考・・・瘧疾は別名で「おこり」、「瘧」、「ガイ瘧」、 「間歇熱」とも言います。 |
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脚痺 (きゃくひ) |
脚痺は足のしびれをこう言います。 脚痺の症状はリュウマチ、腰痛、関節痛などがあります。 |
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瘧母 (ぎゃくぼ) |
瘧母は大塚敬節先生の書物によれば「瘧母は慢性マラリアで 脾腫が長く残っている場合を言います。」と記載されています。 |
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九竅 (きゅうきょう) |
九竅は人間の右目、左目、右耳、左耳、右鼻孔、左鼻孔、口、 尿道、肛門などの九個の穴をこう言います。 |
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胸脇苦満 (きょうきょうくまん) |
胸脇苦満は腹診で肋骨の下部分に親指を押し込むと圧迫痛や 指を押し出そうとする抵抗感がある場合を胸脇苦満と言います。 胸脇苦満は左右に診られたり、右側の肋骨部分だけに 見られたり、反対に左側の肋骨部分だけに見られたりします。 一番多く診られる場所は右側で、右側には肝臓、すい臓、 胆嚢などの臓器があり胸脇苦満は肝炎、肝硬変、胆のう炎、 胆石症、すい臓炎などの症状で確認される事があります。 胸脇苦満が診られる人は実証の人が多く、他に肝障害、 胆嚢炎、胆石症、すい臓炎、感冒、喘息、胃腸障害、高血圧、 神経症等の病気を患っている人にも診られます。 胸脇苦満の場合は柴胡を配合した漢方処方を用います。 実証の場合は大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、四逆散など を用います。 中間証の場合は小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、 十味敗毒湯、乙字湯、抑肝散、柴苓湯、柴陥湯など を用います。 最後に虚証の場合は柴胡桂枝乾姜湯、補中益気湯、 加味逍遙散などを用います。 |
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夾食 (きょうしょく) |
夾食は「食を夾(はさむ)」と書き、名前のように食物が 何らかの原因で胃部に停滞する事を言います。 |
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狂躁 (きょうそう) |
狂躁は落ち着きが無く、何時も狂ったように騒ぐ症状を 指します。 狂躁は現在の神経症、ヒステリーを指します |
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キョウ廷賢 (きょうていけん) (*キョウは龍の 下が共) |
キョウ廷賢(1539年生まれ~1632年頃没) キョウ廷賢は中国の明時代に生まれました。 キョウ廷賢の家は代々医家で、彼の父親でキョウ信も名医で あったと言われています。 彼は幼少より官僚を目指して勉学に勤しんだが夢叶わず、 医師になり、中国全土に留学し、最終的に宮廷の御典医 になりました。 彼は父キュウ信が書いた医学書に自身の考えを付け足した 医学書「古今医鑑」を最初に著作し、次いで「万病回春」、 「寿世保元」などの書物を残しています。 余談・・・キョウ廷賢の弟子の戴曼公(たいまんこう)は 日本に渡来し、キョウ廷賢の「万病回春」を日本で最初に 紹介して日本全土に広め、日本漢方流派の後世派に影響を 与えました。 戴曼公(たいまんこう)は当時不治の病と恐れられていた 痘瘡の治療もおこないました。 |
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胸中煩悸 (きょうちゅうはんき) |
胸中煩悸は動悸症状に胸苦しさが伴う場合をこう言います。 参考・・・胸中煩悸は煩悸、心中煩悸とも言われます。 |
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行痺 (ぎょうひ) |
行痺の参考・・・素問 痺論篇に 「風寒濕三氣雜至、合而爲痺也。其風氣勝者、爲行痺。」 「痺は風、寒、湿3種類の気が交じり合って起こる物です。 その中で風が勝っている場合に行痺が診られます。」と 記載されており、行痺の特徴は名前の如く痛みや痺れが 風のように移動するのが特徴です。 行痺に用いられる漢方処方は葛根湯、大防風湯、 烏薬順気散、八味丸などがよく用いられます。 痺論には行痺の他に痛痺、着痺が記載されています。 行痺は別名で風痺とも呼ばれます。 |
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虚火 (きょか) |
虚火は疲労、ストレス等が原因で体内の陰気や水分が不足し、 体内で陽気が旺盛になっている状態をこう言います。 虚火の症状は興奮、イライラ、不眠、火照り、充血などの症状が 診られます。 虚火に用いられる生薬は人参、地黄等があり、これらを含む 漢方処方は八味丸、滋陰降火湯、麦門冬湯、四物湯、温清飲 などが用いられます。 参考・・・虚火の反対は実火です。虚火は別名で内火とも 言われます。 |
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虚寒 (きょかん) |
虚寒とは陽気が不足して裏が弱まり、弱った裏に寒が停滞し、 その停滞した寒が原因で裏に水分が溜まる状態を言います。 虚寒は陽気の不足が原因です。 虚寒証は虚証の場合によく診られます。 虚寒証を改善するには補陽剤を用います。 参考・・・虚寒の反対が虚熱です。 |
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虚数(脈) (きょさくみゃく) |
虚数脈は脈に力強さが無く、脈拍が速く、心拍数が多い脈 を言います。 数脈は病邪に勢いがあり、病邪の進行が早い事を示しており 注意が必要です。 |
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去湿法 (きょしつほう) |
去湿法は水毒症状の人で梅雨、湿度の高い夏、秋の長雨の 時期の湿気が原因で起こる関節の腫れ、下半身の浮腫、頻尿、 下痢、体内水分の代謝異常などを除湿作用のある漢方処方で 取り除く事を言います。 去湿法に用いられる漢方処方は五苓散、平胃散、 苓桂朮甘湯、小青竜湯、白虎湯、桂枝加苓朮附湯、 真武湯などがあります。 参考・・・去湿法は別名で除湿法とも言われます。 |
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虚実 (きょじつ) |
虚実は病気に対して抵抗力が無い身体状態を「虚」と言い、 病気に対して抵抗力がある身体状態を「実」と言います。 虚実の状態を表現する言葉として「虚証」、「実証」、 「虚熱」、「実熱」、「裏実」、「裏虚」、「腎虚」など 様々な表現で使われています。 |
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虚証 (きょしょう) |
虚証は病気に対して抵抗力が無く、体力が低下している 身体状態を言います。 虚証の場合は体力が無いので、まず体力向上作用、健胃作用、 体を暖める作用のある漢方処方を用います。 虚証と言われる症状には ① 痩せ型、水太り、胃弱体質。 ② 消極的で疲れやすく、神経質。 ③ 夏ばてしやすく、冬の寒さも弱く、食後倦怠感、 眠気がある。 以上の症状が虚証の人に見られます。このような症状には 人参、附子、乾姜、朮などの体力向上作用、健胃作用、 体を暖める作用のある生薬が配合された漢方方を用います。 しかし「傷寒論」には「表虚」、「裏虚」、「上半身の実」、 「下半身の虚」などの状態が書かれており、どの証なのか 判断が難しい事があります。 参考・・・病人の証の区別(虚証、中間証、実証)が つかない場合はまず、虚証系の漢方処方から始め、 効き目が無ければ中間証系の漢方処方、次に 実証系の漢方処方と変えていけば良いでしょう。 傷寒論、太陽病中篇 (100)で 「傷寒、陽脈渋、陰脈弦、法当腹中急痛、先与小建中湯、 不★者、小柴胡湯主之。」 {★の漢字は(「さ」と読み(やまいだれ+差)で 癒えるという意味です。} 「傷寒で陽脈は渋、陰脈は弦で腹が痛み、処方を迷う時は、 まず先に虚証系の小建中湯を用い、効果が無ければ実証系の 小柴胡湯を用いなさい。」と記載されています。 |
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虚躁 (きょそう) |
虚躁は虚証に属する人が煩躁、気の上衝などが原因で 悶え苦しむ状態をこう言います。 |
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去痰法 (きょたんほう) |
去痰法は中焦の機能低下が原因で出来る痰を取り除く 漢方処方を言います。 参考・・・去痰作用のある漢方処方は二陳湯、麦門冬湯、 滋陰降火湯、瓜呂枳実湯などです。 二陳湯は後世派の基本処方の一つです。 他に二陳湯をベースに改良を加えた平胃散、不換金正気散、 カッ香正気散、温胆湯、半夏白朮天麻湯などを用います。 |
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虚熱 (きょねつ) |
虚熱は体内にある陰液が不足して陽気を冷ます事が出来ずに 発熱している状態を言います。 虚熱証は虚証の場合によく診られます。 虚熱証を改善するには補陰剤を用います。 参考・・・虚熱の反対が虚寒です。 |
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去風 (きょふう) |
去風は風邪を取り除く事を言います。 風邪は熱邪、湿邪、寒邪、燥邪、外邪と結合して 現れる場合が多いです。 |
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虚滿(虚満) (きょまん) |
虚満は虚証の人が腹部に膨満を感じたり、腹部に膨満が 診られる状態をこう言います。 虚満の症状は陽明病期の実満とは異なり腹部に膨満感は あるが、軟弱で軟らかく、脈には力が無く、大便は軟便又は 下痢の場合が多いです。 腹水も診られる事があります。 虚満は太陰病期に見られ、用いられる漢方処方は 桂枝加芍薬湯、小建中湯、真武湯、人参湯、分消湯 などが用いられます。 参考・・・虚満の反対は実満です。 |
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虚(脈) (きょみゃく) |
虚脈は寸口、関上、尺中などを触れても力強さを感じず、 空虚を感じる脈をこう言います。 虚脈は虚証の人によく診られ肉体的には精気が乏しく、 気血が充実していない人が多いです。 参考・・・虚脈の反対は実脈です。 |
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虚労 (きょろう) |
虚労は単なる肉体疲労、精神疲労だけを述べているのでは ありません。 漢方医学で言われる虚労は虚弱体質者の疲労や平素は 丈夫な人が、病気や怪我などの治療後に疲れを感じる 症状を指します。 |
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気淋 (きりん) |
気淋は五淋の一つで、外台秘要方、証治要訣に気淋の 語句が見られます。 気淋の症状は二種類あります。 ①小便に残尿感があり、小便に勢いが無くポタポタと 滴のような小便が出る症状を指します。 ②神経質な人や精神的な要因が原因の頻尿をこう言います。 気淋の原因として膀胱炎、前立腺炎、尿路結石、尿道炎 などが原因の排尿痛、排尿異常やカンジタ菌、淋菌、 ブドウ球菌、連鎖球菌などの菌が原因の場合があります。 気淋に用いられる漢方処方は五苓散、清心蓮子飲、 竜胆瀉肝湯、八味丸、五淋散などが用いられます。 |
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金匱 (きんき) |
金匱の「金」は黄金や金玉を意味し、 「匱」は箱を意味します。 すなわち金匱は金や玉で作った大切な箱と言う場合と 重要な書物を金匱に入れて保管しなさいと言う意味が あります。 |
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金匱要略 (きんきようりゃく) |
金匱要略(別名 金匱玉函要略方論) 中国の漢代に張仲景が中国各地に伝わる漢方処方を研究し、 書物にしたのが「傷寒論」、「金匱要略」です。 「傷寒論と金匱要略は元々「傷寒雑病論全十六巻」と 言われる一冊の本でしたが戦乱が原因で一旦この世から 消えます。 しかし張仲景から100年後の西晋の時代に王叔和という 人物によって散逸していた傷寒雑病論を集め、整理し 編集されました。 余談・・・王叔和の編集の時に雑病だけが見つからなかった ので後に「傷寒論」と呼ばれるようになりました。 行方不明になっていた「雑病」の部分は千金方や外台秘要方に 書かれている内容がこれではないかと言われていました。 やがて北宋時代に王洙という人が宮中で 「仲景金匱玉函要略方」という書物を発見し、調査の結果 これが今まで不明だった「雑病」の部分であることが 判りました。 この書物の上巻は「傷寒」について、中巻は「雑病」 について、下巻は「漢方処方」と「婦人の治療法」について 書かれていました。 この書籍も林億によって「傷寒論」と重複しない「雑病」、 「方剤」、「婦人病」の部分を校訂し、他に欠けている部分を 千金方や外台秘要方などの医学書から補足しました。 これが「金匱要略」です。 「傷寒論」は急性熱病(主に腸チフス)の治療方法を 編集しているのに対し、「金匱要略」は慢性疾患や数々の病気の 治療方法について書かれており、(所謂雑病)と 記載されています。 参考・・・金匱要略の名前の由来は「この書物は大変重要な 書物なので金や錦で作った箱に入れなさい。」と言う意味が 名前にあり、昔から重要な書物として扱われていました。 |
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金元医学 (きんげんいがく) |
金元医学は中国、前漢時代に書かれた「黄帝内経」の 陰陽五行説を人体に当てはめて治療をする漢方医学です。 金元医学の中心人物は中国では劉完素、張従正、李杲、 朱震亨などが中国の金元医学の中心人物にあたり、 日本では田代三喜、曲直瀬道三、曲直瀬玄朔などが日本の 金元医学の中心人物にあたります。 金元医学の特徴は金元時代より以前から主流だった 「傷寒論」、「金匱要略」、「和剤局方」の治療理論 (傷寒論で陰病は温薬、熱薬を用いて身体を暖める処方、 和剤局方は身体を暖め、体力を回復させる処方)とは異なる 理論を四人の漢方医が述べた事に特徴があります。 劉河間は「全ての病の原因は熱(炎症)である。風、湿、 寒、燥などの邪気も火と化して病邪になる。 火熱の治療は寒剤、涼剤を用いなさい。」述べました。 張従正は劉河間の考えに付け加え「熱(邪気)は環境に よって変化する物だから熱(病邪)を下げるには古方で 用いられた発汗剤、催吐剤、瀉下剤などを利用し改良を 加えながらの治療したほうがよい。」と述べました。 劉河間、張従正の二人は過激な理論を展開しましたが、 李杲が「劉河間、張従正の理論では体力低下を招くため脾胃、 気を補いながら熱を清する補剤を用いたほうがよい。」 と述べました。 最後に朱丹渓は「熱の原因は体内の水分不足が原因だから 水を補う処方を用いるほうがよい。」と述べて新しい時代の 新しい漢方理論が生まれたのが特徴です。 参考・・・劉完素、張従正、李杲、朱丹渓は金元四大家 と言われ、劉完素は寒剤、涼剤を用いたので「寒涼派」と 呼ばれ、張従正は発汗剤、催吐剤、瀉下剤を用いたので 「攻下派」と呼ばれ、李杲は気力、体力を回復する処方を 用いたので「補土派」と呼ばれ、朱丹渓は体内水分を補う処方 を用いたので「養陰派」と呼ばれました。 |
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金元四大家 (きんげん よんだいか) |
金元四大家は金元時代に活躍した漢方医をこう言います。 金元四大家と言われる漢方医は劉完素、張従正、李杲、 朱震亨がこう呼ばれ、彼らの考えが日本の後世派の漢方医に 大きな影響を与えました。 |
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緊(脈) きん(みゃく) |
緊(脈)は血管が緊縮して、力強さを感じる脈を言います。 又緊脈は病邪が内側に迫る状態の時に見られます。 参考・・・緊脈の反対は緩脈です。 |
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