安中散(アンチュウサン)
生薬構成
桂枝ー4.0 延胡索ー3.0 牡蠣ー3.0 (小)茴香ー1.5 縮砂ー1.0 甘草ー1.0 良姜ー0.5

安中散加茯苓の場合は茯苓ー5.0加える

(原典の太平恵民和剤局方には縮砂の代わりに乾姜が配合してあります。)
安中散原文
太平恵民和剤局方】 (一切気門)

治遠年日近、脾疼飜胃、口吐酸水、寒邪之気留滞於内、停積不消、胸隔脹満、攻刺腹脇、悪心嘔逆、面黄肌痩、四肢倦怠、又婦人
血気刺痛小腹連腰、攻チュウ(※)重痛、並能治之(※チュウ=ダク+主)

【方読弁解】 (心腹胸痛)

此方、元来反胃ニ用ユ。甘草ヲ主トシテ、良姜、乾姜、茴香ノロウ(※1)ヲ佐トシ、腹中ヲ緩メ温ル功アリ。今僻嚢病、腹痛、食ヲ吐シ、
甘ヲ好ムモノニ用テ大ニ功アリ。僻嚢ノコトハ、本?方蒼朮丹ノ論ニ詳ナリ。又此方ニ蒼朮丹、赤石脂ノ末ヲ兼用シテ佳ナルコトモアリ。
蒼朮ハ腹中ノ水気ヲ乾ス故ニ、大便秘結ノ者ニハ忌ト雖ドモ僻嚢ニ因テ便實スル者、水気アリテ秘スル故ニ之ヲ用ユ。又赤石脂ハ水穀
分利スル功アリ。故ニ小便ヲ通ニ用ユ。
オ血(※2)ヲ化スル処ニ用ルト異也。又此方、主治ニ隨テ反胃ニ用ユルトキハ、腹痛スル者ヲ目的トシ用ベシ。腹痛ナキモノハ
外臺反胃大驗ノ方ヲ優レリトス。又嘔吐反胃門ニ見タリ。
(※1のロウは上が「米」、下が「大」)(※2のオ血は、やまいだれ+於)

【方輿ゲイ(ゲイは車+兒)】

婦人、血気刺痛、小腹ヨリ腰ニ連リ、攻チュウ(※)重痛スルヲ治ス。(※チュウ=ダク+主)

勿誤薬室方函口訣】 
此方、世上ニハ僻嚢ノ主薬トスレドモ、吐水甚シキ者ニハ効ナシ。痛ミ甚シキ者ヲ主トス。反胃ニ用ユルニモ腹痛ヲ目的トスベシ。
又婦人血気刺痛ニハ僻嚢ヨリ反テ効アリ。
安中散解説
この漢方処方は「太平恵民和剤局方」、「聖済総録」に見られ、「安中」の「中」とは中焦すなわち胃腸を意味し、胃腸の各種症状を
和らげる漢方処方と名付けられた。

太平恵民和剤局方によれば「本方は慢性、急性を問わず胃に痛みを発し、胃の内容物、胃液の嘔吐が見られます。
これは胃に寒があり、寒が原因で停滞蓄積した食物を消化せず、腹が張り、刺すような痛みを発し、悪心、吐き気、嘔吐を起こします。
病人の顔色は悪く、黄色味帯び、倦怠感を訴える症状に良い。又,婦人の月経痛が加わり,下腹部から腰にかけての痛みにも良い」と
記載されています。

勿誤薬室方函口訣によれば「この方は胃拡張、胃下垂の主薬ですが、嘔吐がはなはだしい人に用いてはいけません。痛みがある人
には効果があります。胃拡張や胃癌などに用いる場合も腹痛がある場合を目的として用いなさい。
又、婦人の月経痛からくる下腹部から腰にかけて神経性の痛みにも効果があります。と記載されています。
(男性でも差し支えは無いです)

方読弁解にも書かれているように、胃腸が元来丈夫では無いが食欲があり、甘味を好む人によく用いられます。その場合に
大塚敬節先生は牡蠣を取り除き、牡蠣の代わりに代赭石を加えて曖気、むねやけを止む功があると自身の書物に書かれています。
安中散適応症
@どちらかと言えば痩せ型で、体力がやや低下している。(やや虚証

A胃痛、腹痛があり、甘味を好み、むねやけ、貧血傾向が伴う場合。

B寒疝留飲心下痞硬心下痛、下半身から腰にかけての痛みが見られ、ムカムカ感、噫気、食欲不振、吐き気、嘔吐が伴う場合。

C神経疲労、身体倦怠感が見られる場合。

D上記の症状が慢性症状である。(原文では急性、慢性を問わずと明記されているが、急性の場合、実熱が原因で適さない事があります。)

E以上の症状から安中散の適応疾患は
 ・神経性胃炎
 ・冷えを伴う慢性胃炎、
 ・胃拡張、胃下垂
 ・胃・十二指腸潰瘍
 ・逆流性食道炎
 ・痛みを伴う胃酸過多症
 ・過敏性腸症候群
 ・月経痛
などに適応されます。
各種生薬の役割
安中散を構成する生薬の大部分は健胃、鎮痛、温薬で、が原因の慢性の痛みに効果があります。
それゆえ新しい炎症や潰瘍の場合は、実熱が原因の場合がありますので注意が必要です。

安中散に含まれる桂枝は滞血をめぐらせ腹痛を取り、延胡索は神経性の痛み、通経薬として月経痛を緩和させ、縮砂は腹痛を治め、
茴香は胃を温め、消化吸収を良くします。

これらはは全て身体を温める温剤と呼ばれ、寒冷により消化吸収が低下し、胃内停水、腹痛が生じた身体には温剤服用が効果的と思われる。

又、牡蠣は精神不安を取り除き、酸を中和する作用があり、甘草には鎮痛と各種生薬の調和作用があります。


最後に元々安中散は生薬を粉末にし、お酒や薄めたお酢、塩水で服用してましたが、現代は煎じて服用する場合が多いです。
(安中散料と言います。)

矢数道明先生は動悸が伴う場合に安中散に動悸、利尿、胃内停水によい茯苓5グラムを加え「安中散加茯苓」として処方しています。

大塚敬節先生は曖気、むねやけがある場合は安中散から牡蠣を取り除き、牡蠣の代わりに代赭石を加えればよいと自身の書物に
書かれています。

安中散と柴胡を含む漢方薬との併用も根本治療に用いられ、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、四逆散に茴香、牡蠣を加える処方が有効と考えられます。
参考処方
実証・・・・大柴胡湯、四逆散、黄連湯、清熱解鬱湯など

中間証・・柴胡桂枝湯、半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、生姜瀉心湯など

虚証・・・・安中散、桂枝加芍薬湯、小建中湯、人参湯、四君子湯、六君子湯など
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