薏苡仁、よくいにん、ヨクイニン | |
基原植物和名 | |
鳩麦、はとむぎ、ハトムギ | |
生薬名 | |
薏苡仁、よくいにん、ヨクイニン | |
基原植物学名(ラテン語名) | |
Coicis fructus cum involucris | |
生薬英語名 | |
Coix fruit with involucre | |
植物英語名 | |
Coix lacryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf | |
分布 | |
ヨクイニンはジュズダマ属ーイネ科の植物で主にインドシナ、東南アジア、中国南部の 暖かい地方が原産です。 ハトムギから砲鞘、えい、果皮を取り除いた中の白い部分を薏苡仁(よくいにん) と言います。 ヨクイニンの原種はジュズダマと言われています。 ジュズダマの変種がハトムギと言われ、原産国の東南アジアではハトムギの他に 色々なジュズダマの変種が見られます。 ヨクイニンの名前の由来としてヨクイニンの「ヨクイ」は中国名(漢名)での呼び方で、 ヨクイニンの「ニン」は「仁」と書き、これは種子を意味します。 ヨクイニンは江戸元禄時代に宮崎安貞によって刊行された「農業全書」 に記載されております。 農業全書 2巻 五穀之類 薏苡 「ヨク苡、是二種あり。其粒細長く、皮うすく米白く粘りて、濡米のごとくなるが、 真ヨク苡なり。薬にもこれを用ゆべし。 一種又丸く皮厚く、実ハ少くかたきありうゆべからず。提子とて大きなるあり。 数珠とす。 うゆる地の事。尤湿気を好む物なり。何にても、糞しを多く用ひ、旱せバ水をそゝき、 「酸棗仁」、「カ楼仁」、「郁李仁」、「柏子仁」、「麻子仁」などがあります。 ヨクイニンは日本薬局方に記載されています。 ヨクイニンは主にインドシナ、中国南部の暖かい地方が原産です。 中国には今から2000年ぐらい前の新王朝末期から後漢王朝創成期に活躍した武将の 馬援将軍が交趾(今のベトナム)に遠征した時に取って帰ったと言われます。 日本に渡来した時代は不明だが古くから日本の温暖地域で栽培されている1年草の 植物です。 徳川時代の享保年間から栽培を始めたと古い書物には書かれています。 |
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特徴・形態 | |
ヨクイニンの特徴として1年草で茎は数本群がって生え、茎は直立の状態で1メートルから 1.5メートルぐらいまで成長します。 葉は細長い広線形で互生し、葉の質は硬く、茎の付いている葉の基部は鞘状になって茎を 囲んでいます。 葉の幅は2.5センチ程あります。 花期は8月から10月で葉腋に長さが不ぞろいの花柄をもつ雌花、雄花を数個つけます。 果実ですが、果実が熟すと雌花を囲むさやに硬い円形の果実をつける。 それをハトムギと言います。 ハトムギの直径は1センチ、2センチぐらいの硬い楕円形で、中に1個のえい果が あります。 薬用部分として9月から10月にハトムギの種子を採取して果皮、種皮を取り除き 乾燥させた物をヨクイニンと言います。 |
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成分 | |
ヨクイニンに含まれる成分として種子にデンプン、蛋白、脂肪、グルタミン酸、ロイシン、 チロシン、バリン、コイシン、ミリスチン酸、リノル酸、コイクセノライドを含んでいます。 余談・・・近年の研究でヨクイニンに含まれるコイクセノライドには抗腫瘍作用があり、 今現在体内や体外に出来る腫瘍を治療できるのではないかと研究中です。 |
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使用部位 | |
ハトムギの砲鞘、えい、果皮を取り除いた部分(種皮を除いた種子) (生薬名 薏苡仁、よくいにん、ヨクイニン)(日本薬局方) |
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採取時期と管理・保存方法 | |
ヨクイニンの採取時期は9月から11月の秋頃にハトムギの種子を刈り取り、 そこから果実を採取して果皮と種皮を取り除いて風通しのよい所で日干しを行って 乾燥させます。 |
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薬効、服用方法 | |
ヨクイニンは日本薬局方によると漢方処方用薬であり、解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方 及びその他の処方に少数例配合されている。 漢方では利尿作用、排膿作用、滋養強壮作用などがあります。 また、民間療法として、いぼや肌あれに煎じて服用するか粉末を服用します。 ヨクイニンが美肌やイボとりに良いと言われだしたのが江戸中期に活躍した貝原益軒が 書いた「大和本草」が最初の文献といえます。 当店が使用しております煎じるヨクイニンと粉末のヨクイニンは日本産と中国産が ございます。 ヨクイニンを煎じる場合は ヨクイニン約10グラムから30グラムを水600ccから800ccの中に入れて 弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は取り除き、1日数回に分けて 服用します。 ヨクイニンと他の薬草(艾葉、ゲンノショウコ、重薬など)と一緒に煎じて服用しても 良いです。 ヨクイニンの粉末の場合は ヨクイニンの粉末を1回量約1グラム~2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用 するか、お湯に混ぜて服用してください。 (小さじ半分ぐらいが約1グラムです。) 「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで 服用しても結構です。 |
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生薬との組み合わせ | |
ヨクイニン+藤瘤(藤木)+訶子(ミロバラン)+菱実(菱の実)・・・ ヨクイニン+藤瘤(藤木)+訶子(ミロバラン)+菱実(菱の実)を組み合わせた 商品があります。 |
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薏苡仁を含む漢方処方 | |
麻杏薏甘湯(別名:麻黄杏仁薏苡甘草湯) 薏苡仁湯 薏苡仁散 桔梗湯(外台秘要方) 薏苡仁煎 薏苡附子敗醤散 桂枝茯苓丸加薏苡仁 など |
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参考資料 | |
神農本草経ー上品 「薏苡子。一名解蠡。味甘微寒。生平澤。治筋急拘攣不可屈伸。風濕痺。 下氣。久服輕身益氣。其根下三蟲。」 「ヨクイニンは筋肉の痙攣やひきつりが原因の痛み、屈伸が出来ない、リュウマチ、 関節炎、身体麻痺、水腫などに効果があり、 長期にわたり服用すると身が軽くなり、強壮薬になります。」 古方薬議 「味甘寒。筋脈の狗攣、風湿痺を主り、気を下し、腸胃を利し、水腫を消し、 熱を清し、肺痿、肺気の膿血を吐するを主る。」 薬徴 「主治浮腫也。」 本草網目 「脾を健にし、胃を益し、肺を補し、熱を清し、風を去り、湿に勝つ。飯として 炊いて食べれば冷気を治し、煎じて飲めば小便熱淋を利す。」 本草網目 「ヨクイニンについて「一種は歯に粘るもので、尖っていて殻が薄い、即ちヨクイニン である。その米は色白く、糯米のようなもので粥、飯にもなり、または粉にして食べ、 酒に醸すこともできる。」 |
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その他 | |
薏苡仁の効能として美肌、イボ取り、肌荒れ、母乳が沢山出るようになる等の効果があると 記載している書物は江戸中期に活躍した博物学者の貝原益軒が書いた「大和本草」に 書かれており、「大和本草」は江戸時代の庶民の間で行われていた民間療法を記載しており、 漢方処方を紹介して書物には肌トラブルに対する効能は記載されていません。 余談・・・ヨクイニンがイボ取りや美肌効果は貝原益軒が書いた書物のみに見られ、 神農本草経等の古代中国の薬典には一切見られません。 神農本草経では筋肉痛やリュウマチ、関節痛などに効果があると書かれています。 東洋医学では ①妊娠中の女性が服用しても良く、お腹の胎児にも良い作用のある生薬や漢方薬を 「安胎薬」(あんたいやく)と言います。 「安胎薬」と言われる生薬は・・・木香、黄ゴン(※1)、杜仲、艾葉、人参、香附子、 黄耆、白朮、白芍薬、蘇梗(紫蘇の茎)、秦ギョウ(※2)、陳皮、冬虫夏草など (※1ゴン=くさかんむり+今)(※2ギョウ=くさかんむり+几) 「安胎薬」と言われる漢方薬は・・・当帰芍薬散、当帰散、白朮散 (3種類共に金匱要略婦人妊娠病脈証に掲載されています。) ②妊娠中の女性には慎重に用いる生薬や漢方薬を「慎用薬」と言います。 「慎用薬」と言われる生薬は・・・乾姜、薏苡仁、牡丹皮、附子、大黄、五味子、 呉茱萸、紅花、枳実、午膝、酸棗仁、厚朴、桃仁、辛夷、薄荷、芒硝、半夏、 麻子仁などがあり、ヨクイニンは妊娠中の女性が服用すべき生薬ではありません。 |
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注意事項 | |
①本品は天然物(植物)で性質上吸湿しやすいものがあります。 そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する 原因になることがあります。 ②開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。 ③本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、 食べたりしないようにご注意ください。 ④幼児の手の届かない所に保管してください。 ⑤他に容器に入れ替えないで下さい。 (誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。) |
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ご相談、ご質問 | |
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参考文献 | |
北隆館ー原色牧野和漢薬草大図鑑 | |
薏苡仁(ヨクイニン)の写真 | |
ハトムギー果実 | 日本産ーヨクイニン |
中国産ーヨクイニン | 日本産ーヨクイニンー粉末 |