大棗 タイソウ 棗 ナツメ 夏芽
和名
棗 夏目 夏芽 なつめ ナツメ
生薬名
大棗 たいそう タイソウ 紅棗 コウソウ 黒棗 コクソウ
学名
Zizyphusjujuba Miller var. inermis Rehd
分布
棗(なつめ)はナツメ属ーくろうめもどき科の植物で、薬用としてナツメ(棗 夏芽)の果実を用い、これを生薬名で大棗(タイソウ)
と言います。

和名の夏芽の名前の由来は漢字で書かれているように夏に芽が出るので夏芽と言われます。

大棗(たいそう)は日本薬局方に記載されています。

棗(ナツメ)はヨーロッパ南部からアジア南西部原産の植物でヨーロッパと中国では古くから食用や薬用として利用されて
おりました。

食用としてナツメの果実を干して乾燥させ、お菓子や料理の材料として愛用されています。

余談・・・司馬遼太郎先生の作品の「項羽と劉邦」に子嬰(秦王子嬰)を殺すか殺さないを議論している時に劉邦が小便の為に
中座し、棗の木に小便をかけるシーンが書かれています。

ナツメは古代中国では梅、桃と一緒にデザートとして食されていました。

古代中国人は食人の文化があったので人間の肉と一緒に干した棗を煮込んでスープにしたのかな?

韓国では昔から薬膳料理に使用されており、日本でも有名な料理で鶏肉とナツメや朝鮮人参を煮込んだ「参鶏湯(サムゲタン)」
に使用されたり、ナツメを砂糖や蜂蜜で煮込んだお茶の「デチュ茶」としても飲用されています。

時代が下って日本とロシアが戦争をした旅順では乃木将軍とステッセル将軍が会見をした水師営に棗の木があったと言われます。
尋常小学校国語読本巻十の「水師営の会見」によると
「庭に一木棗の木弾丸跡もいちじるく、くずれ残れる民屋に、今ぞ相見る二将軍」と書いてあります。

さらに「尋常小学唱歌」第十五 水師営の会見にも
「庭に一本、棗の木、弾丸あともいちじるくくづれ残れる民屋にいまぞ相見る二将軍。」と歌われていました。

他に童謡「あのこはだあれ」にも
「あの子はたあれ たれでしょねなんなんなつめの 花の下・・・・」と歌われています。

日本に渡来した時期は不明(奈良時代?)だが、平安時代中期に編纂された文献の「延喜式」に
「乾棗(ほしなつめ)」、「大棗(たいそう)」の名前が見られ、日本でもこの当時よりナツメは食用、薬用として用いられていたと
思われます。

余談・・・平安時代に書かれた現存する日本最古の薬学辞典と言われる「本草和名」によれば
「大棗、和名於保奈都女(たいそう=日本名 おおなつめ)」の記述があります。

参考・・・万葉集にもナツメを詠んだ歌も2首あります。このことからナツメの渡来は奈良時代より前かもしれません。

万葉集に載せられている棗の句
玉掃刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃かむため」・・・詠み人 長意吉麻呂

梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く」・・・詠み人 不明

余談・・・・家相風水で「陽木」、「陰木」と言われる木があり、「陽木」とは庭に植えると幸福が訪れる木を指し、
ナツメは家相では「陽木」に該当します。(信じる信じないはあなた次第です。)


余談は続きますが、「棗(ナツメ)」の漢字には「朿(トゲ)」が上下にあります。ナツメの木にはトゲがいたる所ににあるので
この漢字があてがわれたと言われます。
ちなみに「朿」が横に並ぶと「棘(トゲ)」になり、棘のあるナツメの木が横に並んで茂っている姿を表しています。

他に「朿」がある漢字は「人を刺す。」、「対策を練る。」、「策士策に溺れる」などがあり、あまり良い気持ちにならない漢字です。

ナツメとサネブトナツメの違いですがサネブトナツメが原種で、トゲが多いサネブトナツメを品種改良してトゲが無い、あっても
小さいナツメが出来ました。
サネブトナツメは種子を生薬として使用し、ナツメは果実を生薬として使用します。

サネブトナツメは種子だけが大きく発達した植物ですので、果肉が大きくなったナツメのように食べることは余りありません。
果実は酸味が強く食用には適しておりません。酸味が強い棗という意味で「酸棗」と言います。
和名の核太棗の名前の由来は「ナツメの核(さね)が大きく太い棗」なので「核太棗(サネブトナツメ)」と言われます。
大棗の名前の由来は簡単で、「大きな棗」言う意味です。

余談・・・近年、サネブトナツメは消費量の上昇、天候不良や投機の対象などが原因で価格の上昇と資源確保が難しい
生薬になっています。
そこで、サネブトナツメ(生薬名 酸棗仁)の近縁種のナツメ(生薬名 大棗仁)の種子が代役になるかの研究が進んでいます。
特徴・形態
ナツメは高さが最大で10メートルぐらいの木で、木の特徴として枝の節に小さなとげをつけます。

葉は羽状復葉で小枝に互生しており、葉の形は卵形で長さは約2センチ〜6センチあります。

花期は4月から6月の春から初夏でこの時期に黄色を帯びた花を数個咲かせます。

やがて果実を実らせます。果実は楕円形又は広卵形で大きさは2センチから3センチぐらいで幅は2センチぐらいです。

果実は最初の頃は緑色ですが、だんだん黄色になり、熟してくると赤くなります。
その時に果実に細かいシワと艶がが出てくるようになり、果実の両端にくぼみが出来てきます。
果実の内部は海綿体で柔らかく、2層に分かれており、果実の中心部に楕円形で扁平の種子があります。

この赤く熟した果実を大棗(別名で紅棗{こうそう})と言います。

薬用部分として熟した果実を乾燥させた成熟果実を煎じて服用します。
成分
大棗の成分として果実にジジフスサポニン、糖(ショ糖)、オレアノール酸、オレアノン酸、酒石酸、マスリニン酸、ベツリン酸、
粘液質などが含まれています。
使用部位
薬用部分として熟した果実を乾燥させた成熟果実を使用します。(果実 日本薬局方)
採取時期と管理・保存方法
大棗の採取時期は9月から10月の秋口にナツメの実が赤く熟してきます。
その頃にナツメの実を採取して、蒸してから風通しの良い場所で日干しを行って乾燥させます。
薬効、服用方法
大棗は日本薬局方によると漢方処方用薬である。かぜ薬、鎮痛鎮痙薬、健胃消化薬、止瀉整腸薬、精神神経用薬とみなされる
処方及びその他の処方に高頻度で配合されている。

他に大棗には強壮、利尿、鎮静、健胃、鎮痛薬として神経の興奮を鎮めたり、ヒステリーを抑えたり、子供の夜鳴き、神経過敏
による胃痛、胃痙攣、しつこい咳を鎮めたりします。

大棗は一般的に漢方処方に大抵は含まれており、大棗を入れることにより他に生薬が胃腸に及ぼす影響を和らげたり、
他の生薬が持っている苦味、辛味などの味覚を矯正して飲み易くします。

大棗と生姜が組み合わされた漢方処方が多々あります。
これは大棗と生姜が漢方薬を服用することに起こる可能性がある副作用を軽減出来るからと言われています。

大棗を煎じる場合は
大棗約5グラムから10グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は
取り除き、1日数回に分けて服用します。

大棗と他の薬草(ヨクイニン、艾葉、ゲンノショウコなど)と一緒に煎じて服用しても良いです。

大棗の粉末の場合は
大棗の粉末を1回量約1グラム〜2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、お湯に混ぜて服用してください。
(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。)

大棗の粉末を単独で服用しても良いが、牛乳、野菜ジュース、スープなどに混ぜて服用しても良いですし、小麦粉と混ぜて
料理に使用されても結構です。

「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
大棗の薬用酒 
大棗を薬用酒として服用すると滋養強壮、疲労回復などに効果があります。

大棗の薬用酒の作り方ですが
大棗・・・200グラム
氷砂糖・・・200グラム又はグラニュー糖200グラム
ホワイトリカー・・・1.8リットル
(他に色々な薬草を混ぜてミックス薬用酒を作っても良いです。枸杞子と一緒に漬けても良いです。)

これらの品を容器に入れて約3か月ほど直射日光の当たらない場所で熟成させます。

熟成させる時に出来るだけ空気に触れないようにしっかり密封して下さい。密閉できる容器を使用して下さい。
空気に触れると味が変わる恐れがあります。

30日に1回は中身を2回から3回程振って均等に成分が出るようにしてください。
人によっては味の好みが異なりますので、30日に1回は味見をしてお好みの味であれば薬草を引き上げても結構です。

3か月ほど熟成させたら木綿の布かコーヒー用の濾過紙で濾過しながら薬草を取り出し、杯1杯を目安に服用します。

飲みにくい場合は蜂蜜や水飴、砂糖で味を調えても結構です。

一度の大量服用はお勧めしておりません。

枸杞子や熟地黄などと一緒に浸けて熟成させ、服用すればより効果が高まります。
 
生薬の組み合わせ 
大棗+生姜⇒大棗と生姜を組み合わせることにより食欲増進、消化促進を促して他の生薬との調和と薬効を高め、胃内停水が
原因の咳嗽、痰の症状を鎮めます。

又、大棗と生姜を組み合わせる事により生姜が原因の胃腸への負担を軽減します。
(例⇒ 柴胡桂枝湯、小柴胡湯、大柴胡湯、葛根湯、柴朴湯、柴苓湯、帰脾湯、補中益気湯、桂枝湯、桂枝加芍薬湯、呉茱萸湯、
小建中湯、婢加述湯、越婢湯、四君子湯、六君子湯、防己黄耆湯、参蘇飲、炙甘草湯、清肺湯、平胃散など)

大棗と生姜の組み合わせは数ある漢方処方の中で二番目に多い基本的な組み合わせです。

大棗+生姜+甘草⇒大棗と生姜と甘草を組み合わせることにより生姜が身体を温めて胃腸の機能を整え、大棗が生姜が
もたらす胃腸への負担を軽減し、甘草は各種生薬の効き目を調和します。
(例:小柴胡湯、柴朴湯、柴苓湯、柴胡桂枝湯、桂枝湯、桂枝加苓朮附湯、四君子湯、六君子湯、補中益気湯、十全大補湯、
人参養栄湯、清心蓮子飲、帰脾湯、加味帰脾湯、防己黄耆湯、黄耆建中湯、葛根湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝加芍薬湯、
桂枝加竜骨牡蠣湯、排膿散及湯、四君子湯、六君子湯、参蘇飲、清肺湯、平胃散など)

大棗と生姜と甘草の組み合わせは数ある漢方処方の中で一番多い基本的な組み合わせです。
(ちなみに漢方薬の基本は桂枝湯(桂枝+大棗+甘草+生姜)です。

大棗+白朮⇒大棗と白朮を組み合わせることにより胃内停水が原因の下痢、嘔吐などの症状を改善します。
(例⇒柴苓湯、胃苓湯、帰脾湯、五積散、補中益気湯、越婢加述湯、四君子湯、六君子湯、防己黄耆湯など)


大棗+茯苓⇒大棗と茯苓を組み合わせることにより胃内停水が原因の下痢、嘔吐などの症状を改善します。
(例⇒柴苓湯、胃苓湯、帰脾湯、補中益気湯、越婢加述湯、四君子湯、六君子湯、五積散、参蘇飲、清肺湯など)


大棗+小麦⇒大棗にも小麦にも神経の鎮静作用があるが大棗は神経の高ぶりを抑え、小麦は脳神経の高ぶりを抑えます。
大棗と小麦を組み合わせることにより自律神経、脳神経の高ぶりを抑えます。
(例⇒甘麦大棗湯)


大棗+甘草⇒大棗と甘草に共通する作用が鎮静、鎮痛、健胃作用です。
大棗と甘草を組み合わせることによりより効果のある鎮静、鎮痛、健胃作用が期待できます。
(例⇒甘麦大棗湯、柴胡桂枝湯、参蘇飲、小柴胡湯、大柴胡湯、葛根湯、柴朴湯、柴苓湯、帰脾湯、補中益気湯、桂枝湯、
桂枝加芍薬湯、呉茱萸湯、小建中湯、大建中湯、越婢加述湯、越婢湯、四君子湯、六君子湯、黄連湯、麦門冬湯、半夏瀉心湯、
苓桂甘棗湯、良枳湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、黄ゴン(※)湯など
(※ゴン=くさかんむり+今))
 
大棗を含む漢方処方
胃苓湯
温胆湯
黄耆建中湯
黄ゴン湯(※ゴン=くさかんむり+今)
黄連湯
化食養脾湯
霍香正気散
葛根湯
葛根湯加川キュウ辛夷(※キュウ=くさかんむり+弓)
加味温胆湯
加味帰脾湯
加味平胃散
甘草瀉心湯
甘麦大棗湯
帰耆建中湯
帰脾湯
キュウ帰調血飲
キュウ帰調血飲第一加減
桂枝加黄耆湯
桂枝加葛根湯
桂枝加厚朴杏仁湯
桂枝加芍薬生姜人参湯
桂枝加芍薬大黄湯
桂枝加芍薬湯
桂枝加朮附湯
桂枝加竜骨牡蛎湯
桂枝加苓朮附湯
桂枝湯
啓脾湯
桂麻各半湯
堅中湯
香砂平胃散
香砂養胃湯
香砂六君子湯
五積散
呉茱萸湯
柴陥湯
柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡桂枝湯
柴芍六君子湯
柴朴湯
柴苓湯
滋陰降火湯
四君子湯
炙甘草湯
生姜瀉心湯
小建中湯
小柴胡湯
小柴胡湯加桔梗石膏
参蘇飲
清肺湯
蘇子降気湯
大柴胡湯
当帰建中湯
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
当帰四逆湯
独活葛根湯
排膿湯
麦門冬湯
半夏瀉心湯
不換金正気散
平胃散
防已黄耆湯
補中益気湯
補肺湯
六君子湯
苓桂甘棗湯.
など
参考資料
神農本草経ー上品
大棗。味甘平。生平澤。治心腹邪氣。安中養脾。助十二經。平胃氣。通九竅。補少氣少津。身中不足。大驚。四肢重。
和百藥。久服輕身長年。葉覆麻黄能出汗。


薬徴
主治攣引強急也。旁治咳嗽。奔豚。煩燥。身疼。脇痛。腹中痛。

古方薬議
味甘平。中ヲ安ンジ、脾ヲ養イ、胃気ヲ平カニシ、百薬ヲ和シ、心下懸ヲ療シ、嗽ヲ止ム。
その他
特になし
参考文献
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑
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