千振 せんぶり センブリ 当薬 とうやく トウヤク |
和名、植物名 |
千振 せんぶり センブリ |
生薬名 |
当薬 とうやく トウヤク |
学名 |
Swertia japonica |
分布 |
せんぶりはセンブリ属ーリンドウ科に属する植物で、北海道から九州および朝鮮半島から中国大陸の日当たりのよい草地や
山野の雑木林に生えるニ年草です。
センブリは日本の室町時代の後半ごろに日本人が見つけた薬草で、千回振りだしても苦いので「千振(せんふり、せんぶり)
と言います。
センブリの類似種に「ムラサキセンブリ」と「イヌセンブリ」があります。
ムラサキセンブリは関東から西の地方に自生しており、イヌセンブリは本州、四国、九州に自生しております。
日本が特産のセンブリは昔は胃腸薬として用いられてのでは無く、ノミや虱を殺す殺虫剤として用いられてきました。
江戸時代の書物の「和漢三才図会」(1713年 寺島良安著)によると
「和方の丸、散薬諸虫積聚の薬に入れて用いる。」、「今の人はもっぱら当薬で肌着を黄色に染めてノミ、虱から守るのに
使っている。」と書いています。
「大和本草」(1708年 貝原益軒著)によると
「糊に当薬の煮汁を入れて裏打ちし、屏風に張れば虫がわかない。」と書いています。
薬として用いたと書いてある書物として、「本草弁疑」(1681年 遠藤元理著)によると
「腹痛の和方に合するには、此当薬を用べきなり。」と書かれています。
「草木図説」(1856年 飯沼慾斉著)には
「邦人採て腹痛を活し、又よく虫を殺す。」と腹痛と虫殺しの両方に効果があると書かれています。
余談・・・日本には古来より日本独特の薬草文化がありました。
その薬草文化を「和薬(わやく)と言い、民間の間で細々と家伝、秘伝として伝えられてきました。
和薬と言われる代表的な薬草はドクダミ、ゲンノショウコ、センブリ、キササゲ、タラノキ、ウラジロガシ、カキドオシ、ヨモギ
などをこう言います。
ちなみに「和漢薬(わかんやく)」は上記の「和薬」と「漢方薬」を合わせた処方をこう言います。
センブリの学名は「Swertia japonica」と言い「japonica」は「日本産、日本の」と言う意味です。
センブリ以外に「japonica」と学名が付く植物は「ウラジロ」、「イタドリ」、「オケラ」などがあります。 |
特徴・形態 |
センブリの特徴として草丈は約20センチから30センチ程で、根は分岐しており根の色は黄色です。
茎は根元から分枝しているかそのまま一本の枝だけで直立するかで、茎の形は4稜形で、色は暗紫色です。
茎の太さは約2ミリ程です。
根の近くの葉は小形で倒皮針形をしており、茎にある葉は対生しており葉の形は線形または広線形で葉の先は尖っています。
葉の長さは2センチから4センチ程で、葉の幅は1ミリから3ミリで葉は無柄ですが葉の色は緑色です。
センブリの花は8月から10月頃に枝先と葉えきに多数の花を付けます。この花は秋に出た芽が冬を越した物が花を付けます。
花は白色の5弁花で紫色の条線が縦にあります。
花には雄しべが5本と雌しべが1本あります。
花が散る頃に果実を実らせます。果実は朔果で花冠よりも少し長く、披針形をしています。
全草を噛むととても苦いです。 |
成分 |
センブリに含まれる成分として全草に苦味成分のセコイリドイド配糖体スウェルチアマリン、スウェルサイド、ゲンチオピクロサド、
アマロゲンチン、アマロスベリンやキサントン誘導体のスベルチアニンやトリテルペンのオレアノール酸などが含まれています。
スウェルチアマリンは胆汁、膵液、唾液の分泌を促進します。
スウェルサイド、ゲンチオピクロサドなどは水で50万倍薄めても苦味を感じます。 |
使用部位 |
センブリの全草(生薬名 当薬 とうやく トウヤク) |
採取時期と管理・保存方法 |
秋にセンブリの花が咲いている時に全草を採取して根についている土を取り除き、日干し乾燥します。
(その時に水洗いはしません。)
昔は日本全国どこでも見られた植物ですが、今は乱獲と環境汚染で山奥にしか見られない植物になりました。
もしもセンブリを採取される場合は冬場の花が散って種子が地面に落ちた頃に採取して下さい。 |
薬効、服用方法 |
当薬を服用すると苦味健胃薬として食欲不振、食べ過ぎ、飲みすぎ、二日酔い、消化不良などの症状で弱った胃腸の機能を
整えたりします。
又、センブリエキスには毛根を刺激して発毛を促す作用もあり、市販されている育毛剤に含まれており、頭髪を生やす作用も
あります。他に苦味チンキとしても使用します。
当店が使用しておりますセンブリ、当薬は煎じるセンブリ、粉末のセンブリ、共に日本産です。
当薬を煎じる場合は
当薬約0.5グラムから1グラムをコップに入れて熱湯を注ぎ、熱湯が人肌程度に冷めればセンブリを取り除いて服用します。
当薬は苦味が出る間は何度でも使用できますので、冷蔵庫で保管して下さい。
当薬の粉末の場合は
当薬の粉末を1日量約0.03グラム〜0.15グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、お湯に混ぜて
服用してください。(耳かき1杯ぐらいが約0.05グラムです。)
「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。 |
生薬との組み合わせ |
特に無し |
当薬を含む漢方処方 |
特に無し |
参考資料 |
「和漢三才図会」(1713年 寺島良安著)
「和方の丸、散薬諸虫積聚の薬に入れて用いる。」、「今の人はもっぱら当薬で肌着を黄色に染めてノミ、虱から守るのに
使っている。」
「大和本草」(1708年 貝原益軒著)
「糊に当薬の煮汁を入れて裏打ちし、屏風に張れば虫がわかない。」
「本草弁疑」(1681年 遠藤元理著)
「腹痛の和方に合するには、此当薬を用べきなり。」
「草木図説」(1856年 飯沼慾斉著)
「邦人採て腹痛を活し、又よく虫を殺す。」 |
その他 |
特に無し |
参考文献 |
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑 |
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