山梔子ーさんししーサンシシ | |
基原植物和名 | |
梔子、くちなし、クチナシ | |
生薬名 | |
山梔子、さんしし、サンシシ 梔子、しし、シシ 水梔子 |
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基原植物学名(ラテン語名) | |
Gardeniae fructus | |
生薬英語名 | |
Gardenia Fruit | |
植物英語名 | |
Gardenia jasminoides Ellis | |
分布 | |
山梔子はクチナシ属ーあかね科の植物で、薬用として梔子(くちなし) の果実を用い、これを生薬名で山梔子(サンシシ)と言います。 山梔子(サンシシ)は日本薬局方に記載されています。 山梔子は中国大陸、朝鮮半島、台湾などの東アジアから日本の静岡県から 九州までの西部地方の温かい地域に自生する常緑低木植物で、 庭園樹として植栽されています。 クチナシが日本に持ち込まれた時期として「日本書紀」によれば、 682年に種子島よりクチナシが献上されてと書かれています。 他に日本では古くから栗(おせち料理のの栗きんとんの色付け)、 芋、タクワンなどの色付けに用いたりしていました。 後、飛鳥時代、天平時代には衣装を黄色に染めるために利用されたり、 他に薬用として用いられていました。 大分県、臼杵市の郷土料理にクチナシで色付けしたご飯の 「黄飯(おうはん)」があります。 余談・・・古代中国や日本では黄色は高貴な色と言われ、 クチナシから採取出来る黄色は皇帝や高僧が着る服の染料として 利用されていました。(他にウコンやサフランなども用いられました。) クチナシやサフランに含まれる黄色の色素はカロテノイド系の黄色色素の 「クロシン(クロチン)」と言います。 日本の伝統色に「支子色(梔子色)(くちなしいろ)(別名 謂はぬ色)」 と言われる赤黄色があり、平安時代には皇太子が着用する着物の色の「黄丹」 と同じ染料を使用しているので禁色になった過去があります。 今は着物やお菓子、料理などの着色に用いられています。 他の伝統色として緋色(ひいろ)、(別名 スカーレット)と呼ばれる色があり、 平安時代前期までは茜で染めた色でしたが、平安中期以降はウコンやクチナシ などの黄色染料を下染めしてからベニバナをかける方法で緋色を出していました。 山梔子は神農本草経の中薬(中品)に記載されており、内容として 「枝木。一名木丹。味苦寒。生川谷。治五内邪氣。胃中熱氣。面赤酒皰。 鼻。白癩赤癩瘡瘍。」 と記載されています。 日本では江戸時代に活躍した古方派の漢方医吉益東洞が書いた薬徴に 書かれており、薬徴によると 「主治心煩也。旁治発黄。」と書かれています。 他にも山梔子は明治時代に活躍した折衷派の漢方医浅田宗伯が書いた 古方薬議のも書かれており、古方薬議によると 「味苦寒。胸心、大小腸ノ大熱、心中ノ煩悶ヲ療シ、小便ヲ通ジ、 五種ノ黄病ヲ解シ、大病、労復ヲ起コスヲ治ス。」 と書かれています。 余談・・・・家相風水で「陽木」、「陰木」と言われる木があり、 「陽木」とは庭に植えると幸福が訪れる木を指し、クチナシは家相では 「陽木」に該当します。(信じる信じないはあなた次第です。) 松山が生んだ俳人 正岡子規はクチナシを題材にした句を詠んでいます。 「薄月夜 花くちなしの 匂いけり」 詠み人 正岡子規 渡哲也さんの「くちなしの花」は名曲です。 |
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特徴・形態 | |
クチナシの特徴ですが高さが最大で2メートルぐらいになる常緑低木で、 幹は多数に分枝し、枝には毛があります。 葉は対生し短柄で、葉の形は長楕円形で葉の先は尖り、葉は光沢のある 緑色をしており、葉の長さは平均で5センチから10センチぐらいで 厚みのある革質の葉です。 花期は6月から7月の初夏で、枝先に直径が約6センチぐらいで 6枚の大きな白い花びらを持つ花を咲かせます。 花びらは厚みがあり、花は強い芳香があり、その香りはとても良いです。 香りの良い植物として春は「ジンチョウゲ」、秋には「キンモクセイ」、 「クチナシ」と言われるぐらい香りが良いです。 花びらは最初は白色ですが、時間と共に黄色に変色します。 花の基部は筒状で、筒部は細く、長さが2センチぐらいあります。 余談・・・くちなしの花は一重咲きと八重咲き (植物名 オオヤエクチナシ)があります。 一重咲きは野生種、原種で一般的に薬用、食用、料理用に 用いられる果実を実らせます。 八重咲きは園芸用に改良された品種で、世界各地で見られ、 花はバラの花によく似ており、バラのように白い花びらを何枚も重ねて咲きます。 花の香りも花びらの数が多くつくように改良されているので一重咲きよりも 香りが強く、美しい花ですが、雄しべが無く、果実は実りません。 花が散った秋口に2センチから3センチの果実を実らせます。 最初の頃果実は赤みを帯びた黄色の果実ですが、だんだん黄色になり 熟してくると赤くなります。 赤く熟した果実を山梔子(さんしし)と言います。 果実は約2センチから3センチほどの大きさで、果実は長卵形または卵形で 果実の先は萼があり、その萼は角のように尖っており、果皮に縦状の6本の 筋が見られます。 果実の外皮を割れば中に円盤型種子が沢山詰まっています。 円盤型種子の大きさは約3ミリぐらいです。 余談・・・クチナシの名前の由来は諸説あります。 ①・・・果実が赤く熟しても裂開して種子を散布しません。 つまり口を開かないので「口無し」、「口無」と言われるようになりました。 ②・・・果実の先っぽの萼を鳥のクチバシ、果実全体を梨に例えて、こ れらを組み合わせて「口梨」と言われるようになりました。 などの説がありますが、一般的には①の説が有力です。 他に梔子の名前の由来は「梔」は「さかずき」を指しており、 「子」は実を指しています。 つまり梔子は「さかずき」の形をした実という意味です。 「新撰字鏡」や延喜18年(918年)に発刊された日本最古の 植物図鑑の「本草和名」には「久知奈之(くちなし)」と書かれており、 「日本書紀」や「延喜式」には「支子(くちなし)」と書かれています。 クチナシを煎じるとお湯が黄色に染まります。これはカロチノイド系色素の クロシンで、飛鳥時代や天平時代の衣服を黄色に染める為の染料として 用いられていました。 (日本でもっとも古い染料の一つと言われています。) 薬用部分として熟した果実を乾燥させた成熟果実を煎じて服用します。 余談・・・6月28日の誕生花は「クチナシ」で、 花言葉は「私は幸せ者」です。 (山梔子は日本薬局方に記載されています) |
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成分 | |
成分として果実にゲニポシド、ガルデノシドなどのイリドイド配糖体、 クロチン(クロシン)、クロセチンなどのカルチノイド色素を含んでおり、 この成分が食物や衣服などに黄色をつける役割をします。 クロチン(クロシン)は日本でもっとも古い染料の一つと言われています。 他にβーシトステロール、脂肪油などが主な成分です。 |
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使用部位 | |
赤黄色に変色して熟した果実 生薬名 (山梔子 さんしし サンシシ) | |
採取時期と管理・保存方法 | |
山梔子の採取時期は10月から11月の晩秋にクチナシの果実が赤く熟してきます。 赤く熟した果実を採取してから果柄とがくを取り除き、風通しの良い場所で 日陰干しを行って乾燥させます。 |
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薬効、服用方法 | |
山梔子は日本薬局方によると漢方処方薬として消炎排膿薬、皮膚疾患用薬、 尿路疾患薬、精神神経用薬とみなされる処方およびその他の処方に 配合されています。 他に山梔子の服用方法として山梔子をお茶代わりとして服用するか、 山梔子の粉末をお湯と一緒に服用するか、山梔子の粉末を外用薬として 患部に貼るかなどの方法があります。 山梔子には消炎(特に胃、肝臓、肺、心臓、心包等の熱を取り去ります。)、 利胆(胆汁分泌促進)、鎮静、鎮痛、利尿薬、止血(血便、血尿、吐血) として胃炎、胃潰瘍、肝炎、黄疸、止血(血便、血尿、吐血)、不安、不眠、 胸痛、捻挫、打撲、打ち身、腰痛などに用いられます。 山梔子は一般的に漢方処方に大抵は含まれており、山梔子を入れることにより 内臓の炎症を和らげたり、鎮静、止血効果が向上します。 他に山梔子は黄疸の原因となる血中ビリルビンを減少させます。 山梔子の服用方法は 山梔子約5グラム~10グラムを水600ccから800ccの中に入れて 弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は取り除き、 1日数回に分けて服用します。 山梔子と他の薬草(艾葉、ゲンノショウコ、重薬など)と一緒に煎じて 服用しても良いです。 (肝臓疾患に用いる場合は茵チン(※)蒿や柴胡と一緒に服用し、 胃疾患に用いる場合は黄連や黄柏と一緒に服用すればより効果が向上します。) (※チン=くさかんむり+陳) (胃腸が弱い人が大量に服用すると胃腸機能を弱める恐れがあります。) 山梔子の粉末の場合は 山梔子の粉末を1日量約3グラム~6グラムを目安に水またはぬるま湯で 1日数回服用するか、お湯に混ぜて服用してください。 (小さじ半分ぐらいが約1グラムです。) (肝臓疾患に用いる場合は茵陳蒿と胃疾患に用いる場合は黄連と一緒に 服用すればより効果が向上します。) 「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合は オブラードに包んで服用しても結構です。 山梔子の粉末を湿布薬とする場合 山梔子には消炎、鎮痛作用があり、外部に湿布薬として利用すれば打ち身、 捻挫、打撲、腰痛などの緩和薬として効果があります。 余談・・・打ち身、打撲、捻挫などの炎症を伴う症状にはには3つの 兆候があります。 痛み、発赤、腫れが打ち身、打撲、捻挫などに診られる症状です。 一般の湿布薬や塗り薬などの消炎貼付薬は「インドメタシン」 が主薬になって配合されていますが、これは主に「痛み」に効果がありますが、 「痛み」と「発赤」は山梔子のほうが優れていると思われます。 適度の山梔子の粉末と同量の黄柏の粉末とと小麦粉と少量の酢を混ぜ合わせて 患部に貼ると良いと言われます。 他に山梔子の粉末と卵白1個と小麦粉と酢を混ぜ合わせて患部に貼っても 効果があります。 |
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生薬との組み合わせ | |
山梔子+黄連⇒山梔子と黄連を組み合わせることにより心、脾胃、肝の消炎、 解熱を促して熱が原因の煩渇、不安焦燥、不眠などの症状が軽減します。 (例⇒ 黄連解毒湯、温清飲、荊芥連翹湯、清上防風湯、柴胡清肝湯など) 山梔子+茵チン(※)蒿⇒山梔子と茵陳蒿を組み合わせることにより山梔子の 消炎利尿作用と茵陳蒿の消炎利尿作用が交じり合って体内にあるオ熱を 取り去り、オ熱が原因の煩悶と黄疸を治し、肝臓の解毒機能を高めて肝炎、 肝硬変を治療したり、肝臓の機能低下による身体の痒みを鎮めたり、 胆のうからの胆汁分泌を促進させます。 又、体内に停滞している熱を利尿作用により体外に排泄させて肝臓や胆のう の炎症も治療します。 (例⇒茵チン蒿湯、茵チン五苓散など) 山梔子+黄柏⇒山梔子と黄柏を組み合わせることにより消炎、解熱を促して 胃内停水、尿量減少、打撲、打ち身、捻挫などの症状が改善します。 (例⇒ 黄連解毒湯、温清飲、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯など) 山梔子+柴胡⇒山梔子と柴胡を組み合わせることにより胆のう、肝臓の解熱が 促され胆のう炎、肝炎などの症状が改善されます。 (例⇒ 加味逍遙散、加味帰脾湯、柴胡清肝湯など) |
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山梔子を含む漢方処方 | |
茵チン蒿湯 茵チン五苓散 温清飲 黄連解毒湯 加味逍遙散 加味帰脾湯 荊芥連翹湯 柴胡清肝湯 梔子柏皮湯 清上防風湯 清肺湯 防風通聖散 竜胆瀉肝湯 など |
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参考資料 | |
神農本草経ー中品 「枝木。一名木丹。味苦寒。生川谷。治五内邪氣。胃中熱氣。面赤酒皰。鼻。 白癩赤癩瘡瘍。」 薬徴 「主治心煩也。旁治発黄。」 古方薬議 「味苦寒。胸心、大小腸ノ大熱、心中ノ煩悶ヲ療シ、小便ヲ通ジ、 五種ノ黄病ヲ解シ、大病、労復ヲ起コスヲ治ス。」 名医別録 「目赤熱痛、胸心、大腸、小腸ノ大熱、心中煩悶ヲ療ズ」 |
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その他 | |
クチナシの学名は「Gardenia jasminoides Ellis」と言い、クチナシの花の香りが ジャスミンのようなので「asminoides」と言われます。 |
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注意事項 | |
①本品は天然物(植物)で性質上吸湿しやすいものがあります。 そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する原因に なることがあります。 ②開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。 ③本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、 食べたりしないようにご注意ください。 ④幼児の手の届かない所に保管してください。 ⑤他に容器に入れ替えないで下さい。(誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。) |
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参考文献 | |
北隆館ー原色牧野和漢薬草大図鑑 | |
山梔子(サンシシ)の写真 | |
山梔子(クチナシ)ー一重咲き | 山梔子(クチナシ)ー果実 |
山梔子(サンシシ)ー原型 | 山梔子(サンシシ)ー刻み |
山梔子(サンシシ)ー粉末 | |