黄連 おうれん オウレン |
和名 |
菊葉黄連 きくばおうれん キクバオウレン
芹葉黄連 せりばおうれん セリバオウレン |
生薬名 |
黄連 おうれん オウレン |
学名 |
菊葉黄連 Coptis japonica(Thunb.)Makino
芹葉黄連 Coptis japonica Makino var.dissecta(Yatabe)Naka |
分布 |
オウレンはキンポウゲ科ーオウレン属に属する植物でオウレンは数少ない日本特産の薬用植物です。
オウレンは日本各地の山林の木陰や森林の樹下、高山帯の湿気の多い日陰に自生する常緑の多年草植物です。
オウレンは北半球に10種類ほど自生しており、その内の4種類が日本で確認されています。
黄連はオウレンの根皮を指し、これを採取して乾燥させた物を黄連(おうれん)と言います。
黄連の名前の由来として
@ 黄連の根茎を割ってみると中が鮮やかな黄色をしている。
A 黄連の根茎に小さな塊があり、この小さな塊が連なっている。
以上の特徴を合わせて「黄連」と呼ばれます。
ちなみに菊葉黄連(きくばおうれん)と芹葉黄連(せりばおうれん)の名前の由来は葉が菊の葉に似ているので
「菊葉黄連(きくばおうれん)」と名づけられました。
葉がセリの葉に似ているので「芹葉黄連(せりばおうれん)」と名づけられました。
黄連も黄柏と同様に昔から染料として使用されてきた歴史があります。
黄連は日本薬局方に記載されています。
黄連は神農本草経の上薬(上品)に記載されており、内容として
「一名王連。味苦寒。生川谷。治熱気。目痛眥傷泣出。明目。腸ヘキ腹痛下利。婦人陰中腫痛。久服令人不忘」
(※1 ヘキ=さんずい+辟)と書かれています。
余談・・・神農本草経には「黄連」を「王連」と書いており、黄連には間違いないと思います。
日本では昔から数少ない日本特産の薬用植物として愛されており、平安時代より以前にオウレンは「カクマグサ」や
「ヤマクサ」と呼ばれていましたが、
平安時代に書かれた書籍の本草和名(ほんぞうわみょう)(918年に作成された日本最古の薬物辞典)や
和名抄(わみょうしょう)(932年に作成された日本最古の百科事典)には中国側の呼び名の「黄連」として取り上げています。
時代は下り江戸時代に活躍した本草学者の貝原益軒が書いた書物の「大和本草」によると
「日本の黄連性よし。故に中華、朝鮮にも日本より多く渡る。中華の書に日本産黄連を良とす。」と書かれています。
同じく江戸時代の学者の香川修庵が書いた「一本堂薬選(1729年)」の
黄連の項目には
「流行性疾患による熱病、熱を伴う下痢、下痢のための食欲不振、流行性結膜炎、ただれ目、中風、小児鬱熱などに
効果があります。」と書かれています。
同じく江戸時代に活躍した古方派の漢方医吉益東洞が書いた薬徴によると
薬徴・・・・「心下ノ煩悸ヲ主治スル也。傍ラ心下ノ痞、吐下、腹中ノ痛ミヲ治ス。」と
書かれています。
薬徴によると黄連は「胸が苦しく、動悸がする症状を治療する」と書かれています。
他に薬徴には動悸を治す生薬として「黄連」、「人参」、「茯苓」を挙げています。
明治時代に活躍した折衷派の漢方医浅田宗伯が書いた古方薬議によると
古方薬議・・・・「味苦寒。熱気、腸ヘキ、腹痛、下利、煩躁ヲ主リ、血ヲ止メ、口瘡ヲ療ス。」と書かれています。
日本に自生しているオウレンはコセリバオウレン、芹葉黄連(せりばおうれん)、菊葉黄連(きくばおうれん)、
梅花黄連(バイカオウレン)などがありますが、薬用として用いられるのが生産量が多いセリバオウレンで、キクバオウレンも
薬用として用いられる場合があります。
オウレンの自生地として
セリバオウレンは本州太平洋側と日本海側と四国の山林に自生しております。
キクバオウレンは北海道から本州の日本海側の山深い山林に自生しております。
さらに余談ですが
日本産オウレンは採取できる場所によって呼び名が異なります。
丹波黄連
越前黄連
因州黄連
加賀黄連
日光黄連
佐渡黄連
などの名が付けられている。(なぜか四国産黄連(高知県産)の名前がない・・・?) |
特徴・形態 |
オウレンは日本各地の山林の木陰や樹下に自生する雌雄異株の多年草で、葉は根茎から群生しており、葉の形は長柄で
三出複葉です。小葉も柄があり、形は卵形で先は尖り、2〜3裂して鋭い鋸歯があります。
2月〜3月の早春の頃に10センチメートルほどの花茎を出し、その花茎の先に数個の互生の白色小花が開きます。
花の直径は1.2センチメートルぐらいで、花は両性花と雄花があり、一つの花のがく片は5〜6枚で皮針形、
花弁も5〜6枚あり、がく片より短くさじ形で余り目立たちません。がく片は白く花弁様であります。
花後に1.2センチメートルぐらいの袋果を5〜10個ほど放線状に付けます。
袋果のとがったほうが上になり、そこに小さな穴があいています。
薬用として用いるのは根茎で根茎は伏生しており、地下を斜めに向かいながら育ちます。
根茎はやや肥厚して結節が多く、根茎の表面は黄褐色で多数の黄色のヒゲ根がついております。
オウレンの根茎を切ると断面は橙黄色でなめると苦いです。
日本のオウレンにはキクバオウレンとセリバオウレンがあり、その違いとして
@ キクバオウレンは小葉が1回3出葉
A セリバオウレンは小葉が2回3出葉
B ついでにコセリバオウレンは小葉が3回3出葉です。 |
成分 |
黄連の成分としてアルカロイドのベルベリンを主成分とし、他にパルマチン、コプチシン、ヤテオリジン、オーレニン
などのアルカロイドと、フェルラ酸、マグノフロリンなどを含んでいます。
ベルベリンは黄色と苦味の成分で、主に大腸菌などの腸内細菌やコレラ菌、チフス菌、黄色ブドウ球菌などに対して
強い殺菌力と抗菌力と下痢止め効果があります。
余談・・・アルカロイドのベルベリンは黄柏にも含まれており、黄連と同じく消炎性の苦味健胃薬として用いられます。 |
使用部位 |
オウレンの根茎(ひげ根を取り除いたもの)(生薬名 黄連 おうれん オウレン) |
採取時期と管理・保存方法 |
オウレンの採取の時期として栽培品では播種後5年〜10年程経過(野生品では10年〜15年経過)した物を
10月〜12月ごろに、根茎を掘りとり、葉やひげをむしりとり、水洗いせずに日干しします。
取り残したひげ根が乾燥し、根茎の本体にまだ多少の湿りがあるときを見計らって、ヒゲ根だけをたき火などで焼き、
こすり合わせて焼け焦げのひげ根を取り除きます。
余談・・・昔はヒゲ根だけを焼き、手にわらじをはめてから根茎を持ち、それをむしろに擦って焼け焦げたひげ根を
取り除いていました。
わらじとむしろでオウレンを擦ると多少の光沢感がでます。これを「磨黄連(みがきおうれん)」と言います。
出来の悪い黄連は根茎を割ってみて空洞があったり、隙間がある黄連で、これはB級な黄連です。
出来の良い黄連は中身がぎっしり埋まっている黄連が良い黄連と言われます。 |
薬効、服用方法 |
黄連は日本薬局方によると止瀉薬及び苦味健胃薬として配合薬(胃腸薬)の原料とする。
胃弱、食欲不振、胃部・腹部膨満感、消化不良、食べ過ぎ、飲み過ぎ、胃のむかつき、下痢に煎じて服用する。
また、漢方処方用薬でもあり、健胃消化薬、止瀉整腸薬、止血薬、精神神経用薬とみなされる処方及びその他の処方に
配合される。
他に黄連を煎じて服用すると抗菌、抗炎症作用、止血、抗精神安定、血圧降下などがあり、胃腸病、食欲不振、下痢、
口内炎、動悸、精神不安、脳出血、高血圧などの症状に効果があります。
(胃腸病で黄連を用いる場合は実証で胃酸過多があって胸やけ、曖気などの症状があれば用います。
逆に虚証のひとは「人参」、「茯苓」を処方します。)
余談・・・黄連を含んだ漢方薬は脳、心臓、胃、肝臓などの上焦や中焦にある熱を取り除き、消炎、鎮静、解熱を促す作用が
あると言われています。
薬徴によると黄連は「胸が苦しく、動悸がする症状を治療する」と書かれています。
他に薬徴には動悸を治す生薬として「黄連」、「人参」、「茯苓」を挙げています。
黄連を煎じる場合は
黄連約1グラムから3グラムを水400ccから600ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は
取り除き、1日数回に分けて服用します。
(かなり苦いので蜂蜜か砂糖などで味を整えても結構です。)
黄連と他の薬草(重薬、ゲンノショウコ、ヨクイニンなど)と一緒に煎じて服用しても良いです。
黄連の粉末の場合は
黄連の粉末を1日量約0.2グラム〜0.5グラムを目安に1日数回服用します。
(かなり苦いので蜂蜜か砂糖などで味を整えても結構です。)
「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
余談・・・古代中国の春秋戦国時代に扁鵲と言う大変優秀なお医者さんがいました。
扁鵲は「病の応は体表に見る」(内臓の病気は皮膚に現れる)と述べており、昔の書物によれば扁鵲がある国の王に
謁見した時に王の皮膚を見て王の体内にある病気を見つけて「早く治療しないと手遅れになりますよ。」
と忠告をしたが、王は扁鵲の言葉を聞き入れずに数日後に急死したと書かれています。
昔から「皮膚は内臓の鏡」と言われ、扁鵲が見た内臓の病が皮膚に現れる症状を現在では「デルマドローム」と言われ、
皮膚科医が見つけて内科医への相談を勧める事が多いです。
|
黄連を含む漢方処方 |
烏梅丸(傷寒論=弁厥陰病脈証)
温清飲(万病回春)
黄連阿膠湯(傷寒論=弁小陰病脈証)
黄連解毒湯(外台秘要=第一巻、肘後方=傷寒時気温病門)
黄連湯(傷寒論=弁太陽病脈証 下巻)
荊芥連翹湯(万病回春)
三黄瀉心湯(金匱要略=驚悸吐血胸満オ(※2)1血門)(※2 お=ヤマイダレ+於)
葛根黄連黄ゴン(※1)湯((傷寒論=太陽病脈証 中巻)(※1ゴン=くさかんむり+今)
乾姜黄ゴン(※1)黄連湯
甘草瀉心湯(半夏瀉心湯に含まれる甘草の量を増やした処方)
加味四物湯
柴胡清肝湯(森道伯=一貫堂)
小陥胸湯(傷寒論=太陽病脈証 下巻)
生姜瀉心湯(半夏瀉心湯に含まれる乾姜を減じて、生姜を加えた処方)
清上防風湯(万病回春=面病門)
女神散(安栄湯)(浅田家方=勿物薬室方函)
附子瀉心湯(三黄瀉心湯に附子を加えた処方) |
参考資料 |
神農本草経ー上品
「一名王連。味苦寒。生川谷。治熱気。目痛眥傷泣出。明目。腸ヘキ腹痛下利。婦人陰中腫痛。久服令人不忘」
(※1 ヘキ=さんずい+辟)
薬徴
「主治心中煩悸也。旁治心下痞。吐下。腹中痛。」
古方薬議
「味苦寒、熱気、腸ヘキ(※1)、腹痛、下利、煩躁を主り、血を止め、口瘡を療す。」 |
その他 |
黄連と名前がついた生薬で「鮮黄連(セノウレン)(和名 タツタソウ)」、「胡黄連(コオウレン)」がありますが、
黄連とは植物の種類や用途が全く異なります。 |
参考文献 |
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑 |
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