黄ゴン,おうごん、オウゴンー黄金花、こがねばな、コガネバナ | |
基原植物和名 | |
黄金花、こがねばな、コガネバナ、黄金柳、こがねやなぎ、コガネヤナギ | |
生薬名 | |
黄ゴン(ゴン=くさかんむり+今)、おうごん、オウゴン | |
基原植物学名(ラテン語名) | |
Scutellaria baicalennsis Georgi | |
生薬英語名 | |
Scutellaria Root | |
植物英語名 | |
Skullcap | |
分布 | |
「こがねばな(こがねやなぎ)」はタツナミソウ属ーしそ科の植物で、コガネバナの自生地として 朝鮮半島北部、中国大陸北部、モンゴル、東シベリアなどの日当たりが良くてやや乾燥した 山野などでよく見られる植物です。 黄ゴンは神農本草経の中薬(中品)に記載されており、内容として 「一名腐腹。味苦平、生川谷、治諸熱黄疸、腸?泄利、逐水下血閉、悪瘡疽蝕火瘍。」 と書かれています。 日本には江戸時代中期の享保年間(テレビでお馴染みの八代将軍徳川吉宗の時代)に中国より伝来して、 主に小石川御薬園で栽培されました。 参考・・・小石川御薬園を管理していた芥川小野寺から小笠原石見守に差し出した「御預御薬草木書付控」 の記述によると「朝鮮の黄岑(オウゴン)、享保11年(西暦1726年)預かり」と書かれています。 後、江戸時代に活躍した古方派の漢方医吉益東洞が書いた薬徴によると 薬徴・・・・「心下ノ痞ヲ主治スル也。傍ラ脇胸満、嘔吐、下利ヲ治ス。」と書かれています。 明治時代に活躍した折衷派の漢方医浅田宗伯が書いた古方薬議によると 古方薬議・・・・「味苦平。黄疸、洩利ヲ主リ、小腸ヲ利シ、擁気ヲ破ル。」と書かれています。 コガネバナ(黄金花)の名前の由来として、右の写真の通り花は青紫色をしているが根が黄色(黄金色) をしているので、何故かコガネバナと言われます。 参考・・・普通の植物の根皮は長年の時間をかけて太った根や、太くて大きい根ほど良い品と言われますが、 コガネバナの根はその逆で、太くて大きい根は悪い品と言われます。 では生薬として用いられるコガネバナの根として @ 細くて長い新根を「子ゴン(マルヂクオウゴン)」又は「条ゴン」、「枝ゴン」と言います。 A コガネバナの根の先端部分を「尖ゴン(尖黄ゴン)」と言います。 B コガネバナの根の成長が止まり、腐りだした根を「宿コン」又は「枯コン(ヘゲオウゴン)」 と言います。 C コガネバナの根の中心部が腐って根の周囲だけが残り、板のような形をしている根を 「片コン」又は「平手」、「空腸」と言います。 内部が空洞になっている物は老根です。 以上の根が生薬として取引され、一番高値で取引されるのが「子ゴン」です。 昔は「枯コン」や「片コン」は肺や気管支に熱がある場合の解熱剤として使用され、 「子ゴン」や「条ゴン」は下痢の場合に使用されていました。 黄ゴン(ゴン=くさかんむり+今)は日本薬局方に記載されています。 ただし、根から外皮を取り除いた物のみ用います。 |
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特徴・形態 | |
コガネバナ(コガネヤナギ)の特徴ですが草丈が30センチメートルから60センチメートル程の 高さになります。 茎は四角形のような形の四稜形をしております。 枝は茎の根元部分から多数分枝しており、根元部分は地面を這うような状態ですが、 枝の上部は直立しています。 葉は対生して柄がなく、葉の形は広針形をしており葉の長さは1.5センチから5センチ程あり、 葉の色は全緑でうっすらと毛があり、葉の先端は尖っています。 根茎は長さ5センチから20センチの円錐形で根皮は黄褐色をしており、 根の内部は黄色を帯びております。 コガネバナの花期は6月から9月で花の特徴として茎の先端に穂状花序をつけます。 花の色は紫色又は藤色で花の形は唇形花(しんけいか)をしており、冠の長さは2センチ程あります。 コガネバナの花は立ち上がって咲きます。 コガネバナの根の採取方法と時期ですが4月から5月の春と、10月から11月の秋に根を採取できます。 まず根茎を掘り出して水洗いを行い、綺麗になれば半がわきになる程度の日干しをします。 これから外皮を取り除いてから十分な乾燥が終わるまで日干しをします。 |
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成分 | |
コガネバナに含まれる成分として、根にフラボン誘導体のオウゴニン、バイカレイン、バイカリン、 クリシン、オロキシンA,スクルカプフラボンT、U、遊離アミノ酸などが含まれております。 バイカリン、バイカレイン、オウゴニンなどのフラボン化合物には解熱消炎作用 (特に肺、気管支、腸などの解熱、殺菌による下痢止め)があります。 胆汁分泌促進作用(特にバイカリンに胆汁促進作用があります。)抗アレルギー作用、 利尿作用があります。 |
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使用部位 | |
コガネバナの根から周囲の皮(外皮)を取り除いた物(生薬名・・・黄ゴン(おうごん、オウゴン)) (日本薬局方) |
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採取時期と管理・保存方法 | |
コガネバナの根の採取方法と時期ですが 4月から5月の春と、10月から11月の秋に根を採取できます。 まず根茎を掘り出して水洗いを行い、綺麗になれば半がわきになる程度の日干しをします。 これから外皮を取り除いてから十分な乾燥が終わるまで日干しをします。 |
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薬効、服用方法 | |
オウゴンは日本薬局方によると漢方処方薬であり、健胃消化薬、止瀉整腸薬、瀉下薬、解熱鎮痛消炎薬、 消炎排膿薬、尿路疾患用薬、止血薬、高血圧症用薬、精神神経薬とみなされる処方及び その他の処方に配合される。 他にオウゴンを煎じて服用すると消炎、解熱、利尿、止血などの作用があり頭痛、腹痛、嘔吐、 健胃、胃炎、腸炎、胆汁分泌促進作用、肝機能向上作用、肝障害予防などの症状や機能向上に 効果があります。 黄ゴンが優れている効能、効果として利尿作用や清熱乾湿作用、瀉火解毒作用が優れており、 循環器(肺や気管支)、消化器官(胃や腸)や脾臓、肝臓に停滞する炎症を取り除き弱った 胃腸機能や肝機能を正常にするなどが優れています。 又、黄ゴンは胆汁分泌促進作用があるので胆汁不足による胃腸虚弱者の治療に役立ちます。 他に黄ゴンは肺や腸の解熱作用もあり、漢方で一般的には発汗剤や下剤を用いて解熱させるが、 体力低下や体内水分が不足している場合は黄ゴンが配合された漢方薬を使用します。 代表的な漢方薬として 肺熱を取り除く場合は柴胡と黄ゴンが配合された小柴胡湯を用いて、気管支や肺部にある熱を解熱させます。 腸熱を取り除く場合は黄ゴン湯を用いて、腸熱と腸熱が原因の下痢を止めます。 黄ゴンは単独では服用せずに各種漢方処方に組み込んで服用します。 オウゴンを煎じる場合は オウゴン約2グラムから5グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程 煎じて煎じ終われば薬草は取り除き、1日数回に分けて服用します。 オウゴンと他の薬草(重薬、ゲンノショウコ、ヨクイニンなど)と一緒に煎じて服用しても 良いです。 オウゴンの粉末の場合は オウゴンの粉末を1回量約1グラム〜2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、 お湯に混ぜて服用してください。(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。) 「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで 服用しても結構です。 |
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生薬との組み合わせ | |
黄ゴン+柴胡・・・黄ゴンと柴胡を組み合わせることにより胸脇部や心下部に停滞している炎症や熱を 取り去ります。 (漢方処方・・・乙字湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴朴湯、柴苓湯、 柴胡清肝湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴葛解肌湯、柴陥湯など) 黄ゴン+芍薬・・・黄ゴンと芍薬を組み合わせることにより胃腸の熱や痛みを取り去って裏急、腹痛、 下痢を治療します。 (漢方処方・・・黄ごん湯、温清飲、大柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡清肝湯、五淋散、黄連阿膠湯など) 黄ゴン+地黄・・・黄ゴンと地黄を組み合わせることにより血熱を冷ます作用があります。 (漢方処方・・・黄土湯、温清飲、三物黄ごん湯、荊芥連翹湯、桂枝五物湯、柴胡清肝湯、潤腸湯、 竜胆瀉肝湯など) 黄ゴン+黄連・・・黄ゴンと黄連を組み合わせることにより心下部の痞えや上焦、中焦の熱や炎症を 取り去ります。 (漢方処方・・・温清飲、黄連阿膠湯、黄連解毒湯、葛根黄連黄ゴン湯、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、 三黄瀉心湯、清上防風湯、半夏瀉心湯、女神散など) |
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オウゴンを含む漢方処方 | |
乙字湯 柴胡桂枝湯 小柴胡湯 大柴胡湯 柴胡加竜骨牡蠣湯 柴朴湯 柴苓湯 柴胡清肝湯 柴胡桂枝乾姜湯 柴葛解肌湯 柴陥湯 黄ごん湯 温清飲 五淋散 黄連阿膠湯 黄土湯 三物黄ゴン湯 荊芥連翹湯 桂枝五物湯 潤腸湯 竜胆瀉肝湯 黄連解毒湯 葛根黄連黄ゴン湯 三黄瀉心湯 清上防風湯 半夏瀉心湯 女神散 二朮湯 清心蓮子飲 清肺湯 辛夷清肺湯など |
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参考資料 | |
薬徴・・・「主治心下痞也。旁治胸脇満。嘔吐。下痢也。」 古方薬議・・・「味苦平。黄疸、洩利ヲ主リ、小腸ヲ利シ、擁気ヲ破ル。」 |
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その他 | |
黄ゴンは色々な漢方処方に含まれる生薬であるが、何故か神農本草経には載っていない植物であります。 本来なら上品として記載されても良いほど副作用の少ない植物と言えます。 |
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注意事項 | |
@本品は天然物(植物)で性質上吸湿しやすいものがあります。 そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する 原因になることがあります。 A開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。 B本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、 食べたりしないようにご注意ください。 C幼児の手の届かない所に保管してください。 D他に容器に入れ替えないで下さい。 (誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。) |
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妊婦に対する黄ゴンの効能、効果について | |
東洋医学ですは妊娠中の女性に対して投与する漢方薬や生薬については、長年研究されて確率しており、 2000年位前の時代に書かれた書物の「黄帝内経素問ー六元正紀大論」や金匱要略ー婦人妊娠病脉」や 「備急千金要方」などには妊娠中に投与してよい漢方薬や妊娠時の漢方薬の投与注意点について細かく 指示がされています。 指示の内容として 妊娠中の女性は原則として「虚証」と考えられる。 (体型、体質が「実証」ではないかと思われても「虚証」と考える。) 妊娠中は「虚証」と考えるので「実証」で用いる治療方法(汗法、瀉下法、小便の利(強い利尿剤) これらを「胎前の三禁」と言う。「胎前の三禁」は妊娠中に用いてはならないと言われてきました。 「胎前の三禁」の「汗法」ですが 「汗法」は発汗作用がある「麻黄」が配合された漢方薬(葛根湯、麻黄湯、小青竜湯など)を 服用することをこう言います。 「胎前の三禁」の「瀉下法」ですが 「瀉下法」は大便の排泄を促す下剤成分を含んだ「大黄」や「芒硝」、「麻子仁」が配合された 漢方薬(茵陳蒿湯、大柴胡湯、大黄甘草湯、麻子仁丸、調胃承気湯、桃核承気湯など)を 服用することをこう言います。 「胎前の三禁」の「小便の利」ですが 「小便の利」は利尿作用のある「半夏」や「乾姜」、「附子」、「呉茱萸」、「ヨクイニン」、 「厚朴」などが 漢方薬を服用することをこう言います。 妊娠中に出来れば上記で述べた「胎前の三禁」は余り服用しないことをオススメします。 東洋医学では @・・・妊娠中の女性が安心して服用出来、お腹の胎児にも良い作用のある漢方薬や生薬を 「安胎薬」と言います。 「安胎薬」と言われる漢方薬は「当帰芍薬散」、「当帰散」、「白朮散」などがあります。 (3種類共に金匱要略婦人妊娠病脈証に掲載されています。) 「安胎薬」と言われる生薬は木香、黄ゴン、杜仲樹皮、艾葉、人参、香附子、黄耆、白朮、白芍薬、 蘇梗(紫蘇の茎)、秦ギョウ、陳皮、冬虫夏草などです。 A妊娠中の女性には慎重に用いる生薬や漢方薬を「慎用薬」と言います。 「慎用薬」と言われる生薬は「乾姜」、「ヨクイニン」、「牡丹皮」、「附子」、「大黄」、 「五味子」、「呉茱萸」、「紅花」、「枳実」、「牛膝」、「酸棗仁」、「厚朴」、「桃仁」、 「薄荷」、「芒硝」、「半夏」、「麻子仁」などを指します。 上記で述べた妊娠中には慎重に用いる生薬を含む漢方薬は 「胃苓湯」、「茵陳蒿湯」、「温経湯、「黄連湯」、「乙字湯」、「葛根加朮附湯」、 「葛根湯加川キュウ辛夷」、加味帰脾湯」、「加味逍遙散」、「帰脾湯」、「キュウ帰調血飲」、 「九味檳榔湯」、「荊芥連翹湯」、「桂枝加芍薬大黄湯」、「桂枝加朮附湯」、桂枝加芍薬知母湯、 桂枝人参湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加ヨクイニン、五積散、牛車腎気丸、呉茱萸湯、柴陥湯、 柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、柴苓湯、三黄瀉心湯、酸棗仁湯、 滋陰至宝湯、四逆散、炙甘草湯、芍薬甘草附子湯、潤腸湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗、石膏、 小青竜湯、小半夏加茯苓湯、辛夷清肺湯、参蘇散、神秘湯、真武湯、清上防風湯、清暑益気湯、 清肺湯、川キュウ茶調飲、疎経活血湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、腸癰湯、大建中湯、大柴胡湯、 大承気湯、大防風湯、竹茹温胆湯、治打撲一方、調胃承気湯、釣藤散、通導散、桃核承気湯、 当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬加附子湯、当帰湯、二朮湯、二陳湯、人参湯、人参養栄湯、 排膿散及湯、麦門冬湯、八味地黄丸、半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯、茯苓飲、 茯苓飲合半夏厚朴湯、平胃散、防風通聖散、麻黄附子細辛湯、麻杏ヨク甘湯、麻子仁丸、 よく苡仁湯、六君子湯、苓甘姜味辛夏仁湯、苓姜朮甘湯、六味丸など B妊娠中の女性に絶対投与してはいけない生薬や漢方薬を「禁忌薬」と言います。 「禁忌薬」と言われる生薬は「蛤カイ」、「麝香」、「牛黄」、「海馬」などの動物生薬と 「芒硝」などの鉱物を言い、これらは早期流産や早期出産をもたらす作用があるので禁忌薬に なります。 黄ゴンは安胎薬で黄ゴンを含む漢方処方の「当帰散」は安胎薬ですので安心して服用できます。 |
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参考文献 | |
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑 | |
黄金花ー黄ゴンの写真 | |
黄金花(コガネバナ)ー花 | 黄金花(コガネバナ)ー花 |
黄ゴンー根 | 黄ゴンー根ー粉末 |