葛根 かっこん カッコン
和名、植物名
葛 くず クズ 葛蔓 くずかずら クズカズラ まくず マクズ
生薬名
葛根 かっこん カッコン 葛花 かっか カッカ
学名
Pueraria lobata
分布
葛はクズ属ーまめ科に属する植物で自生地域として北海道から九州の日本各地と朝鮮半島、中国大陸などの東アジアの
温帯地方の山野や土手などの生えるつる性木本です。

葛(クズ)の名前の由来は昔の大和の国(今の奈良県)吉野郡の国栖(くず)に住んでいた国栖(くず)人が都で葛粉を
売り歩いた事が由来とされています。
今でも吉野で作られる「吉野葛」は有名です。

日本書紀によると推古19年(611)に推古天皇が兎田野(宇陀郡大宇陀町)に薬猟(くすりがり)して、
山野に薬草や鹿の若角を求めた記録があり、当帰や葛を採取したかもしれません。

葛根は中国最古の薬物学(本草学)書と言われる神農本草経に記載されています。
神農本草経ー中品によれば
主消渇、身大熱、嘔吐、諸痺、起陰気、解諸毒。葛穀、治下痢十歳己上。一名ケイ斉根。生川谷。
と記載されています。

日本では江戸時代に活躍した古方派の漢方医吉益東洞が書いた薬徴によると
薬徴
・・・・「項背強ヲ主治スル也。傍ラ喘シテ汗出ヅルヲ治ス。」と書かれています。

明治時代に活躍した折衷派の漢方医浅田宗伯が書いた古方薬議によると
古方薬議・・・・「味甘平。大熱ヲ主リ、肌ヲ解シ、ソウ理ヲ開キ、津液ヲ生ジ、筋脈ヲ舒。」と書かれています。

昔は葛の蔓から繊維を取り出して、糸として紡いで着物にしていました。
後、葛の葉は馬が好んで食べるので千葉県では葛を「ウマノボタモチ」、群馬県では「ウマノオコワ」と言う別名がつけられました。

葛の根から取れるデンプンを「葛粉」、「クズデンプン」と言い、葛粉またはクズデンプンは「葛切」、「葛餅」、「葛湯」などに
加工されて食されたり、錠剤賦形剤として使用されたりします。
近年では葛が高級品となっており、100%葛の根のみで作られた物を「本葛」と言います。
本葛があまりにも高級品ですので、その代替品としてジャガイモのデンプンが混ざった物が一般的に流通しております。

日本で葛粉が有名な地域として「奈良県の吉野葛」、「静岡県の掛川葛」、「三重県の伊勢葛」、「福井県の若狭葛」、
「石川県の宝達葛」、「福岡県の秋月葛」、「宮城県の白石葛」が有名です。

葛デンプンは秋から冬にかけて採取と繊維取り、不純物取り、上澄み取り、日干しを行うと純白のデンプン粉が出来ます。
この作業は冬に行うと良質のデンプンが作れます。これを「寒晒し」と言います。

余談・・・・「葛粉」と「葛根」は効能効果が異なります。
「葛粉」・・・・食品
「葛根」・・・・医薬品


葛は秋の七草の「葛(クズ)、桔梗(キキョウ)、(萩(ハギ)、薄(ススキ)、女郎花(オミナエシ)、藤袴(フジバカマ)、
撫子(ナデシコ)」の一つに挙げられております。

ちなみに春の七草は「芹(セリ)、薺(ナズナ)、御形(ゴギョウ)、菘(スズナ)、蘿蔔(スズシロ)、仏の座(ホトケノザ)、
繁縷(ハコベラ)」を指します。

春の七草と秋の七草の違いですが

春の七草・・・七草を食べて無病息災を願う。
秋の七草・・・七草を鑑賞して愉しむ。

葛は万葉集でも詠まれており、万葉集には21首の歌が載っています。
葛を題材にした万葉集の一部ですが
夏葛之 不絶使乃 不通<有>者 言下有如 念鶴鴨」・・・詠み人 大伴坂上郎女
劔後 鞘納野 葛引吾妹 真袖以 著點等鴨 夏草苅母」・・・詠み人 柿本人麻呂

葛の花言葉は「治癒」、「活力」です。


余談・・・落語の枕噺で「葛根湯医者」があり、「頭が痛い」と言えば「葛根湯」、「お腹が痛い」と言えば「葛根湯」、「目が痛い」と
言えば「葛根湯」、最後には付き添いの人にも葛根湯を処方すると言う落ちがついた噺があり、この話は「葛根湯医者」と
言われ葛根湯しか知らない藪医者と落語では笑いをとっていますが、一概には言えないところが葛根湯の妙なるものであります。

「頭が痛い」、「お腹が痛い」、「目が痛い」などの症状は太陽病期によく診られる症状で、仮にですが落語に出てくる医者が
古方派の医者である場合も考えられます。

浅田宗伯先生の勿誤薬室方函口訣にも「古方ノ妙用種々ナリテ思議スベカラズ」と書いてあるように、肩こり以外に
独活と地黄を加えた独活葛根湯は産後の肥立ちや五十肩を治し、朮と附子を加えた葛根加朮附湯は肩痛、上腕神経痛を治し、
川キュウと大黄を加えた葛根湯加川キュウ、大黄は蓄膿症、結膜炎を治し、荊芥と大黄を加えた葛根湯加荊芥、大黄は
初期の性病を治します。

最後に大塚敬節先生の書物によると乳房が張って母乳の出が悪い、乳腺炎などの場合にも葛根湯を用いなさいと
書かれています。

余談・・・昔、丁宗鐵先生の書物の中に「受験生と葛根湯」というコラムがあり、葛根湯は受験生の風邪予防になり、葛根湯に
含まれる麻黄には眠気予防になり、葛根には男性の性衝動、性欲(リビドー)を下げる成分が含まれていると書かれていました。
葛根には「ダイゼイン」、「プエラリン」などが含まれており、これらは「植物性エストロゲン」と称され、女性ホルモンによく似た
作用があります。
特徴・形態
葛の特徴として草丈は最大で10メートルに達し、茎は太く色は赤褐色で基部が木質で著しく伸び、茎には毛があります。
茎は匍匐しながら伸びる場合や他の木や建物などに巻きついて伸びるのが多く見られます。

葛の根は肥大しながら大きくなり、大きいものでは1メートル以上になります。根は葛デンプンを沢山蓄えています。
根の外面は灰白色か淡い褐色で、外面は繊維質です。根にはやや甘味があります。

葛の葉は長い柄があって互生し、長柄のある3出羽状複葉で葉の長さは10センチから15センチほどで、先端の小葉は
円形又は菱状円形で葉の先は急鋭尖頭です。葉の下面はやや白く、白い毛が密生しております。
側方にでる二小葉はへん円形です。葉は時に3裂します。ただし側小葉は2裂です。

葛の花期は7月から9月でフジの花によく似た紅紫色の蝶形花を総状花序に密生しながら多数咲かせます。
花の香りは良いです。

果実は緑色の豆サヤで褐色の毛が生えています。
成分
葛に含まれる成分は根に澱粉、イソフラボン誘導体のダイジン、ダイゼインやプエラリン、カッコネイン、プエラロールなどが
含まれています。

イソフラボン誘導体のダイジン、ダイゼインは鎮痛、鎮痙作用があり、血行を促進して、肩こりの軽減に役立つと言われます。
使用部位
葛の根(生薬名 葛根 かっこん カッコン)
採取時期と管理・保存方法
葛の根の採取時期は10月から11月の晩秋頃に土の中から根を掘り出し、水で洗ってからコルク皮を取り除いて、
約5センチぐらいのサイコロ状にカットするか縦割りにカットしたりして日干し乾燥します。

葛の花の採取時期は花が咲き始める8月頃に採取しますが、花は下のほうから咲くので下から採取して風通しの良い場所で
日干し乾燥させます。
薬効、服用方法
葛根は日本薬局方によると漢方処方用薬である。かぜ薬、解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方及びその他の処方に少数例配合
されている。

他に葛根を服用すると発汗、解熱、鎮痙、鎮痛、止渇作用があり、感冒、首や肩、背中の凝り、神経痛などの症状を緩和させます。

葛根を煎じる場合は
葛根約5グラムから10グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて、煎じて煎じ終われば
薬草は取り除き、1日数回に分けて服用します。

葛根と他の薬草(艾葉、ゲンノショウコ、重薬など)と一緒に煎じて服用しても良いです。

葛花を煎じる場合は
葛花約5グラムから10グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて1日数回服用します。

葛根の粉末を服用する場合
葛根の粉末を1日2グラムから3グラム(小さじ1/2杯から1杯)を目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、
お湯に混ぜて服用してください。(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。)

「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
生薬との組み合わせ
葛根+麻黄・・・・葛根と麻黄を組み合わせることにより発汗を促して筋肉の緊張と熱をを取り除きます。
(漢方処方・・・葛根湯)

葛根+桂皮・・・・葛根と桂皮を組み合わせることにより発汗を促して筋肉の緊張と熱をを取り除きます。
(漢方処方・・・葛根湯)

葛根+芍薬・・・・葛根と芍薬を組み合わせることにより筋肉の緊張を和らげ、血流の流れを良くします。
(漢方処方・・・葛根湯、葛根湯加川キュウ、辛夷など)

葛根+黄連+黄ゴン・・・・葛根と黄連と黄ゴンを組み合わせることにより身体内部にある熱を取り除き、下痢を抑える作用が
あります。
(漢方処方・・・葛根黄連黄ゴン湯)
 
葛根を含む漢方処方
葛根湯

葛根湯加川キュウ、辛夷

葛根紅花湯

桂枝加葛根湯

葛根黄連黄ゴン湯

参蘇飲

升麻葛根湯

葛根加朮附湯

独活葛根湯

柴葛解肌湯など
参考資料
神農本草経ー中品
主消渇、身大熱、嘔吐、諸痺、起陰気、解諸毒。葛穀、治下痢十歳己上。一名ケイ斉根。生川谷。

古方薬議
味甘平。大熱ヲ主リ、肌ヲ解シ、ソウ理ヲ開キ、津液ヲ生ジ、筋脈ヲ舒。
その他
特に無し
注意事項
@本品は天然物(生薬)で性質上吸湿しやすいものがあります。
そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する原因になることがあります。

A開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。

B本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、食べたりしないようにご注意ください。

C幼児の手の届かない所に保管してください。

D他に容器に入れ替えないで下さい。(誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。)
参考文献
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑
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