釣藤鉤 チョウトウコウ カキカズラ
和名、植物名
かぎかずら カギカズラ 鉤蔓 烏鉤蔓 からすのかぎずる カラスノカギズル
生薬名
釣藤鉤 釣藤鈎 ちょうとうこう チョウトウコウ 釣藤 ちょうとこ チョウトコ
学名
Uncaria rhynchophylla
分布
鉤蔓(かぎかずら)はアカネ科ーカギカズラ属に属する植物で本州の房総半島から西の地域や四国、九州の温かい地域
と中国大陸南部の山中に自生する常緑つる性の木本植物です。

釣藤鉤(ちょうとうこう)はカギカズラの枝にある釣り針状に変形した枝を指し、これを採取して乾燥させた物を
釣藤鉤(チョウトウコウ)と言います。

カギカズラに釣り針のようなトゲが出来る原因ですが
植物に出来るトゲは元々は茎や枝の一部で、茎や枝が変態化してトゲになります。
これを「茎針(けいしん)」又は「茎刺(けいし)」と言います。
(バラやタラノキ、サイカチ、柚子などは茎にトゲがあります。)

他に葉が変態化して出来たトゲは「葉針(ようしん)」と言います。
(サボテンは葉にトゲがあります。)

カギカズラは茎や枝の組織(腋芽(えきが))が枯死し変態化したトゲが釣り針のように曲がった茎枝です。
その釣り針のように曲がったトゲを利用して他の植物に巻き付いて成長します。

釣藤鈎の名前の由来として
名前の通り変形した枝が釣り針に似ているので釣藤(ちょうとこ)、鉤蔓(カギカズラ)と言います。

カギカズラは別名で「烏鉤蔓ーカラスノカギズル」と言いますが、同じ名前で「烏鉋蔓ーカラスノカギズル」と言う同音の
植物もあります。
「烏鉤蔓」と「烏鉋蔓」の違いですが

烏鉤蔓ーカラスノカギズル・・・アカネ科の常緑つる性の木本植物、鉤蔓(かぎかずら)の別名です。
生薬名ー釣藤鈎(ちょうとうこう)

烏鉋蔓ーカラスノカギズル・・・アヤメ科の多年草、檜扇(ひおうぎ)の別名です。
生薬名ー射干(やかん)

カラスノカギズルの意味はカラスの足の爪に形が似ているのでこう言われます。
他に猫のツメに似ているので「ネコヅメカズラ」とも言われます。

中国、北宋時代に書かれた「図経本草」にはカギカズラの樹皮を煎じて服用したら小児のひきつけ、疳の虫に効果がある
と書かれています。
時代が下って明の時代になると現在と同じくカギカズラの鈎状のトゲの部分を使用するようになりました。

釣藤鉤は日本薬局方に記載されています。

余談・・・釣藤鉤は「後下」で煎じるのが良いと言われ、「後下」は先に他の生薬を煎じておいて、煎じ終わる5分から10分前
に釣藤鉤を入れて煎じる方法をこう言います。
これは釣藤鉤には熱を加える事により壊れる恐れのある成分が含まれているためと言われます。

ちなみに「後下」で煎じれば良いと言われる生薬は「釣藤鉤」、「薄荷」、「紫蘇葉」です。

近年の研究結果によると釣藤鈎を30分近く煎じると降圧成分が壊れてしまうと言う研究結果が発表されました。

釣藤鉤が配合されている漢方薬(釣藤散、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏)などは散薬、つまり薬研などで粉末にして服用する
漢方薬が多いです。
(例外・・・七物降下湯)

私の知り合いは昔ながらの薬研を用いて釣藤鉤を粉末にしています。
(ミキサーや粉砕にする機械で粉末にすれば早いのですが、その機械の熱も嫌います。彼は徹底しています。)
特徴・形態
カギカズラは関東地方から西日本の暖地の山中に自生するつる性の木本で、長さが10メートル以上になります。

カギカズラは特徴といえる釣り針状に変形した枝を、他の植物に絡めて高く、長く延びようとする特性があります。

若い茎は四角形をしており、枝は水平に伸びます。葉は柄があって対生しており、葉の形は卵形で葉の長さは
5センチから15センチぐらい、葉の幅は5センチぐらいで葉の先は尖り、葉の縁は全辺です。

葉のもとの節の上に側枝が変形して生じた丈夫な2個の曲鈎が対生している木と、1個の曲鈎がある木があります。
この鉤で他の植物に絡みついて高く、長く延びようとする特性があります。

この曲鉤は木質化しており、硬く、他に類を見ない植物と言えます。
(他に華釣藤、大葉釣藤、タイワンカズラなどがあります。)

余談・・・カギカズラにはカギ(トゲ)が対生(2個)している双釣籐(そうちょうとう)とカギ(トゲ)が1個しかない
単釣籐(たんちょうとう)があり、昔は双釣籐のほうが効能、効果が優れていると言われていましたが、近年では両者に
効能、効果の違いがないと言われています。

他に同じ木の同じ枝に1個の曲鈎だけ出した節(単鉤)と2個の曲鈎を出した節(双鉤)が交互に出ているカギカズラも
あります。

花の特徴として夏ごろ(7月)から葉の根元から長い柄を出して、その先の頭状花序に白緑色から黄色の小花が多数集まって
直径2センチぐらいの球状の花冠を作ります。
この球状の花冠は筒状の形で先が5裂しており、中に5本の雄しべと1個の雌しべがあります。

さく果ですが、長さが約5ミリぐらいで中の種子の長さは約0.5ミリぐらいで種子の両端に長い翼があります。
成分
釣藤鉤の成分としてアルカロイドのリンコフィリン、イソリンコフィリン、コリノキセイン、ヒルスチン、ヒルスティンが
含まれています。

アルカロイドのリンコフィリン、イソ・リンコヒリンは鎮静作用、末梢血管拡張作用による血圧上昇抑制作用があると言われ、
血圧上昇が原因のめまい、神経過敏、子供の疳の虫、子供のひきつけに効果があると言われます。

余談・・・カギカズラの仲間で「タイワンカズラ」があり、このタイワンカズラの鉤にはウンカリンA,ウンカリンBが
含まれており、台湾ではウンカリンA,ウンカリンBがマラリアやリューマチに効果があると言われます。

葉にもトゲに含まれる「リンコフィリン」が含まれていますが、トゲに比べると1/3程度の量しか含まれていないと言われます。
使用部位
木質化して釣り針状に変形した茎の上の部分(生薬名 釣藤鉤 釣藤鈎 ちょうとうこう チョウトウコウ)
採取時期と管理・保存方法
カギカズラの採取時期は秋に木質化した鉤状と茎枝を採取して、鈎の部分だけを日干し乾燥させます。
(稀に湯通し又は蒸した釣藤鈎を使用する場合もあります。)
薬効、服用方法
釣藤鉤は日本薬局方によると漢方処方用薬で、血圧降下、消炎、鎮痙の目的で処方に配合されています。

他に釣藤鉤は昔から肝気を和らげる作用があると言われ、釣藤鉤を煎じて服用すると精神安定、血圧降下、鎮痙攣、鎮痛
などの作用があり、血管拡張による高血圧の改善、精神不安、高血圧が原因の頭痛、めまい、脳動脈硬化、ケイレン、
幼児又は小児のひきつけ、疳の虫などの症状に効果があります。

釣藤鉤を煎じる場合は
釣藤鉤約5グラムから10グラムを水400ccから600ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて,、煎じ終われば薬草は
取り除き1日数回に分けて服用します。

(20分以上は煎じないでください。煎じすぎると有効成分が分解する恐れがあります。)

釣藤鉤と他の薬草(重薬、艾葉、ゲンノショウコ、ヨクイニンなど)と一緒に煎じて服用しても良いです。
(釣藤鈎は後で入れて煎じて下さい。)

釣藤鉤の粉末の場合は
釣藤鉤の粉末を1回量約1グラム〜2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、お湯に混ぜて服用してください。
(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。)

釣藤鉤の粉末を単独で服用しても良いが、牛乳、野菜ジュース、スープなどに混ぜて服用しても良いです。

「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
釣藤鈎と生薬との組み合わせ
釣藤鉤+柴胡・・・釣藤鉤と柴胡を組み合わせることにより肝気の緊張を和らげ、神経の緊張と興奮を鎮めます。
(漢方処方・・・抑肝散、抑肝散加陳皮、半夏)

釣藤鉤+菊花+石膏・・・釣藤鉤と菊花と石膏を組み合わせることにより気の上衝を取り除き、精神安定を図り、
清熱にします。
(漢方処方・・・釣籐散)


釣藤鉤+川キュウ(※1)+甘草・・・釣藤鉤と川キュウと甘草を組み合わせることにより頭痛、神経過敏、子供のひきつけや
疳の虫に効果があると言われます。(※1キュウ=くさかんむり+弓)
(漢方処方・・・七物降下湯)


釣藤鉤+天麻+菊花+川キュウ・・・釣藤鉤と天麻と菊花と川キュウを組み合わせることにより頭痛、眩暈などに効果があると
言われます。
 
釣藤鈎を含む漢方処方
釣藤散(類証普済本事方)

抑肝散(保嬰撮要)

抑肝散加陳皮半夏(本朝経験)

七物降下湯(大塚敬節)

釣藤飲

羚羊釣藤湯
参考資料
特に無し
その他
上記で書いたように釣藤鉤や釣藤鉤を含む漢方薬は長時間(20分以上)は煎じないでください。
有効成分が壊れる恐れがあります。
注意事項
@本品は天然物(生薬)で性質上吸湿しやすいものがあります。
そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する原因になることがあります。

A開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。

B本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、食べたりしないようにご注意ください。

C幼児の手の届かない所に保管してください。

D他に容器に入れ替えないで下さい。(誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。)
参考文献
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑
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