百合、びゃくごう、ビャクゴウ | |
基原植物和名 | |
鬼百合、おにゆり、オニユリ 天蓋百合、てんがいゆり、テンガイユリ |
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生薬名 | |
百合、びゃくごう、ひゃくごう、ヒャクゴウ | |
基原植物学名(ラテン語名) | |
Lilii Bulbus | |
生薬英語名 | |
Lilium Bulb | |
植物英語名 | |
オニユリ・・・Lilium lancifolium | |
分布 | |
鬼百合(おにゆり)はユリ属ーゆり科に属する植物で日本では北海道から九州まで分布し、 朝鮮半島から中国までの山林や道端、草地などで見られる多年草の鱗茎植物です。 百合(ユリ)の名前の由来ですが、地下にある鱗茎が100枚ぐらいあって、 それが重なり合って形成されているからそう名付けられたと言われます。 鬼百合は観賞用、食用に栽培されています。オニユリの鱗茎は京料理、中華料理の 材料として使用されます。 ちなみに百合根を食するのは世界で中国と日本だけだそうです。 中国では昔から百合根は食されており、日本では江戸時代ぐらいから食され 始められたそうです。 私事で申し訳ございませんが、中華料理の「海老と百合根の炒めもの」は 非常に美味しいです。 百合は古代中国の書物の神農本草経ー中品(中薬)に載っており 「味甘平。生川谷。治邪気腹脹心痛。利大小便。補中益気。」と書かれています 同じく古代中国の書物の金匱要略には「百合狐惑陰陽毒病脈証併治第三」 という項目があります。 金匱要略では「百合病」を現在のうつ病、ノイローゼ、神経症、精神疾患と考えており、 百合配合の漢方薬が多数書かれております。 金匱要略では「百合狐惑陰陽毒病脈証併治第三」の序文を下記のように 書いております。 「論曰:百合病者、百脈一宗、悉致其病也。意欲食復不能食、常黙黙、欲臥不能臥、 欲行不能行、欲飲食、或有美時、或有不用聞食臭時、如寒無寒、如熱無熱、口苦、 小便赤、諸薬不能治、得薬則劇吐利、如有神霊者、身形如和、其脈微数。 毎溺時頭痛者、六十日乃愈、若溺時頭不痛、淅然者、四十日愈、若溺快然、但頭眩者、 二十日愈。 其証或未病而預見、或病四、五日而出、或病二十日或一月微見者、各随証治之。」 「百合病とは三陰三陽脈のどこからでも発症する病気である。食欲があっても食べられず、 ただ黙っている、眠ろうと思っても眠れない、動こうと思っても動けない、食事が美味しいと 思う時や匂いすら嫌な時がある、寒があるかと思えば寒は無く、熱があると思えば熱は無く、 口の中は苦く、小便は赤い、色々な薬を用いても効果は無く、薬を飲ませると吐いたり、 下したりする。何か取り憑いたような感じだが外見は正常で脈はやや数である。 排尿時に頭痛がある人は治るまで60日ぐらいかかる。排尿時に頭痛がなく寒気があれば 治るまで40日ぐらいかかる。排尿がスムーズにできる人でめまいがある人は20日ぐらいで 治る。上記で述べた百合病の症状がすべて診れなくても患者の症状をよく観察しなさい。 病状発症が4日、5日或いは20日、或いは30日後になる場合がある。その時は症状を 観察しながら薬を決めなさい。」 と書かれています。(翻訳に解釈の違いがありましたらご了承ください。) 簡単に言いますと百合根はうつ病、自律神経失調症、統合失調症などの精神疾患に効果がある と金匱要略には書いております。 同じく金匱要略に狐惑病(こわくびょう)には「甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)」 (傷寒論にも同じ記載あり)、「赤小豆当帰散(ショクショウズトウキサン)」、 「升麻鼈甲湯(ショウマベッコウトウ)」が良いと書かれています。 百合は日本薬局方に記載されています。 百合は日本では古くから馴染みのある植物で、奈良県ー桜井市にある 大神神社(おおみわじんじゃ)では毎年4月18日に「鎮火祭」が催され、 近畿各地の製薬会社、医療関係者が参列します。 祭典には特殊神饌として、神体山の三輪山に自生する忍冬と笹百合の根が 供えられます。 同じく奈良市の率川神社の三枝祭では笹百合を巫女が持って舞を舞ったり、 神前にお供えしたりします。 百合は万葉集にも載っており、百合を詠んだ歌が数首あります。 「安夫良火乃 比可里尓見由流 和我可豆良 佐由利能波奈能 恵麻波之伎香母」 ・・・詠み人 大伴家持 「左由理婆奈 由里毛安波牟等 於毛倍許曽 伊末能麻左可母 宇流波之美須礼」 ・・・詠み人 大伴家持 「吾妹兒之 家乃垣内乃 佐由理花 由利登云者 不欲云二似」 ・・・詠み人 紀朝臣豊河 など他に数首の歌があります。 後、平安時代に書かれた日本最古の薬物辞典の「本草和名」にとると漢名で「百合」 と書かれ、和名で「由利」と書かれています。 オニユリとよく似たユリに「コオニユリ」があります。 オニユリとコオニユリの違いですが、オニユリとコオニユリは花の色、形は非常に よく似ておりますが、オニユリは葉液に零余子(むかご)がありますが、 コオニユリにはムカゴはありません。 |
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特徴・形態 | |
オニユリの特徴ですが草丈は1メートルから2メートルぐらいで茎は直立し、 茎の形は太い円柱形で色は帯緑色で、茎に暗紫色の斑点が一面にあり、白い毛も あります。 葉は互生し、葉の形は広線形又は線状皮針形で葉の先は尖り、葉の長さは5センチぐらい から20センチぐらいまであり、葉は無柄で葉の色は濃い緑色です。 葉えきにムカゴと言われる艶のある濃褐色をした豆粒大の大きさの肉質の 珠芽(しゅが)を付けます。 ムカゴは花が咲く場所には付かず、茎の中ぐらいの場所に付けます。 オニユリの花ですが花期は7月から8月で鞘上に芳香性のある橙赤色をした濃色斑がある 花を4個から20個ほど下向きに咲きます。 花の大きさは直径が約20センチから25センチぐらいで花皮は6枚でどれも 反巻をしています。 オニユリの花の雄しべは6本で、どの雄しべも花の外に付き出しており、 花の中央には1本の雌しべがあります。 地下に白色をした大型の鱗茎があり、この鱗茎は数多くの鱗片が重なって形成しており、 直径は5センチから10センチぐらいまで成長します。. この鱗茎の中心部から茎を1本出します。 オニユリ、コオニユリの鱗茎は食することが出来ます。 (食品名 百合根(ユリネ)として食されます。) |
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成分 | |
オニユリに含まれる成分として鱗茎に多量のデンプン、脂肪、タンパク質、糖類、 ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCなどが含まれています。 |
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使用部位 | |
オニユリ、コオニユリの鱗片茎(生薬名 百合、ビャクゴウ、ひゃくごう)(日本薬局方) | |
採取時期と管理・保存方法 | |
オニユリ、コオニユリの採取時期ですが秋から冬に鱗茎を掘り出してから水洗いをし、 後鱗片を剥ぎとってから熱湯で洗ってから日干し乾燥させます。 |
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薬効、服用方法 | |
百合を服用すると消炎、鎮咳、止渇、利尿、身体に潤いを与える作用、鎮静作用があり、 肺熱が原因の急性咳嗽、慢性咳嗽、喀血、小便不利、解熱、不安解消などに用いられます。 百合を煎じる場合は 百合約5グラムから10グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から 20分程煎じて、煎じ終われば薬草は取り除き、1日数回に分けて服用します。 百合と他の薬草(艾葉、ゲンノショウコ、重薬など)と一緒に煎じて服用しても良いです。 百合の粉末の場合は 百合の粉末を1回量約1グラム~2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、 お湯に混ぜて服用してください。(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。) 「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで 服用しても結構です。 |
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生薬との組み合わせ | |
百合+地黄・・・百合と地黄を組み合わせることにより身体に潤いを与えて、身体内部の余熱を 取り除き、咳嗽や喀血を止め、喉の痛みを緩和します。 (漢方処方 百合地黄湯) 百合+貝母・・・百合と貝母を組み合わせることにより身体に潤いを与えて、身体内部の余熱を 取り除き、咳嗽や喀血を止め、喉の痛みを緩和します。 百合+知母・・・百合と知母を組み合わせることにより身体に潤いを与えて、身体内部の余熱を 取り除きます。(漢方処方 百合知母湯、辛夷清肺湯) 百合+滑石・・・百合と滑石を組み合わせることにより発熱や身体内部の熱を取り除きます。 (漢方処方 滑石代赭湯、百合滑石散) |
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百合を含む漢方処方 | |
辛夷清肺湯ー出典 外科正宗 百合地黄湯ー出典 金匱要略 百合知母湯ー出典 金匱要略 滑石代赭湯ー出典 金匱要略 百合滑石散ー出典 金匱要略など |
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参考資料 | |
神農本草経ー中品(中薬) 「味甘平。生川谷。治邪気腹脹心痛。利大小便。補中益気。」 |
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その他 | |
特になし | |
注意事項 | |
①本品は天然物(植物)で性質上吸湿しやすいものがあります。 そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する 原因になることがあります。 ②開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。 ③本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、 食べたりしないようにご注意ください。 ④幼児の手の届かない所に保管してください。 ⑤他に容器に入れ替えないで下さい。 (誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。) |
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ご相談、ご質問 | |
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参考文献 | |
北隆館ー原色牧野和漢薬草大図鑑 | |
麦門冬(バクモンドウ)の写真 | |
鬼百合(オニユリ)ー花と零余子(むかご) | 百合(ビャクゴウ)ー鱗片茎 |
百合(ビャクゴウ)ー鱗片茎、粉末 | |