山梔子  サンシシ 梔子 クチナシ 
和名
梔子 くちなし クチナシ
生薬名
山梔子 さんしし サンシシ 梔子 しし シシ
学名
Gardenia jasminoides Ellis
分布
山梔子はクチナシ属ーあかね科の植物で、薬用として梔子(くちなし)の果実を用い、
これを生薬名で山梔子(サンシシ)と言います。

山梔子(サンシシ)は日本薬局方に記載されています。

山梔子は中国、台湾などの東アジアから日本の静岡県から九州までの西部地方に自生する植物で
日本では古くから栗(おせち料理のの栗きんとんの色付け)、芋、タクワンなどの色付けに用いたり、
飛鳥、天平時代には衣装を黄色に染めるために利用されたり、他に薬用として用いられていました。

大分県、臼杵市の郷土料理にクチナシで色付けしたご飯の「黄飯(おうはん)」があります。

余談・・・古代中国や日本では黄色は高貴な色と言われ、クチナシから採取出来る黄色は皇帝や高僧が着る服の
染料として利用されていました。(他にウコンやサフランなども用いられました。)

日本の伝統色に「支子色(梔子色)(くちなしいろ)(別名 謂はぬ色)」と言われる赤黄色があり、
平安時代には皇太子が着用する着物の色の「黄丹」と同じ染料を使用しているので禁色になった過去があります。
今は着物やお菓子、料理などの着色に用いられています。

他の伝統色として緋色(ひいろ)、(別名 スカーレット)と呼ばれる色があり、平安時代前期までは茜で染めた色
でしたが、平安中期以降はウコンやクチナシなどの黄色染料を下染めしてからベニバナをかける方法で
緋色を出していました。

山梔子は神農本草経中薬(中品)に記載されており、内容として
「枝木。一名木丹。味苦寒。生川谷。治五内邪氣。胃中熱氣。面赤酒皰。鼻。白癩赤癩瘡瘍。」
と記載されています。

日本では江戸時代に活躍した古方派の漢方医吉益東洞が書いた薬徴に書かれており、薬徴によると
主治心煩也。旁治発黄。」と書かれています。

他にも山梔子は明治時代に活躍した折衷派の漢方医浅田宗伯が書いた古方薬議のも書かれており、
古方薬議によると
味苦寒。胸心、大小腸ノ大熱、心中ノ煩悶ヲ療シ、小便ヲ通ジ、五種ノ黄病ヲ解シ、大病、労復ヲ起コスヲ治ス。
と書かれています。


梔子の名前の由来は「梔」は「さかずき」を指しており、「子」は実を指しています。
つまり梔子は「さかずき」の形をした実という意味です。

余談・・・・家相風水で「陽木」、「陰木」と言われる木があり、「陽木」とは庭に植えると幸福が訪れる木を指し、
クチナシは家相では「陽木」に該当します。(信じる信じないはあなた次第です。)

松山が生んだ俳人 正岡子規はクチナシを題材にした句を詠んでいます。
薄月夜 花くちなしの 匂いけり」 詠み人 正岡子規
特徴・形態
クチナシの特徴ですが高さが最大で2メートルぐらいになる常緑低木で、幹は多数に分枝し、枝には毛があります。

葉は対生し、葉の形は長楕円形で小光沢のある緑色をしており、葉の長さは平均で5センチから10センチ
ぐらいになります。

花期は6月から7月の初夏で6個の大きな白い花びらがある花を咲かせ、香りはとても良いです。
香りの良い植物として春は「ジンチョウゲ」、秋には「キンモクセイ」、「クチナシ」と言われるぐらい香りが良いです。

やがて秋口に2センチから3センチの果実を実らせます。
最初の頃果実は赤みを帯びた黄色の果実ですが、だんだん黄色になり熟してくると赤くなります。
赤く熟した果実を山梔子(さんしし)と言います。
果実は約2センチほどの大きさで、外皮を割れば中に円盤型種子が沢山詰まっています。
円盤型種子の大きさは約3ミリぐらいです。

余談・・・クチナシの名前の由来は果実が赤く熟しても口を開かないので「口無し」と言われるようになりました。
「新撰字鏡」や延喜18年(918年)に発刊された日本最古の植物図鑑の「本草和名」には「久知奈之(くちなし)」と
書かれており、「日本書紀」や「延喜式」には「支子(くちなし)」と書かれています。

クチナシを煎じるとお湯が黄色に染まります。これはカロチノイド系色素のクロシンで、飛鳥時代や天平時代の衣服を
黄色に染める為の染料としても用いられていました。
(日本でもっとも古い染料の一つと言われています。)

薬用部分として熟した果実を乾燥させた成熟果実を煎じて服用します。

余談・・・6月28日の誕生花は「クチナシ」で、花言葉は「私は幸せ者」です。
成分
成分として果実にゲニポシド、ガルデノシドなどのイリドイド配糖体、クロチン、クロセチンなどのカルチノイド色素を
含んでおり、この成分が食物や衣服などに黄色をつける役割をします。

クロチンは日本でもっとも古い染料の一つと言われています。

他にβーシトステロール、脂肪油などが主な成分です。
使用部位
薬用部分として熟した果実を乾燥させた成熟果実を使用します。
果実 日本薬局方
採取時期と管理・保存方法
山梔子の採取時期は10月から11月の晩秋にクチナシの果実が赤く熟してきます。その頃に果実を採取して、
風通しの良い場所で日陰干しを行って乾燥させます。
薬効、服用方法
山梔子は日本薬局方によると漢方処方薬として消炎排膿薬、皮膚疾患用薬、尿路疾患薬、精神神経用薬
とみなされる処方およびその他の処方に配合されています。

他に山梔子の服用方法として山梔子をお茶代わりとして服用するか、山梔子の粉末をお湯と一緒に服用するか、
山梔子の粉末を外用薬として患部に貼るかなどの方法があります。

山梔子には消炎(特に胃、肝臓、肺、心臓、心包等の熱を取り去ります。)、利胆(胆汁分泌促進)、
止血(血便、血尿、吐血)、鎮静、鎮痛、利尿薬として胃炎、胃潰瘍、肝炎、黄疸、止血(血便、血尿、吐血)、不安、
不眠、胸痛、捻挫、打撲、打ち身、腰痛などに用いられます。

山梔子は一般的に漢方処方に大抵は含まれており、山梔子を入れることにより内臓の炎症を和らげたり、
鎮静、止血効果が向上します。
他に山梔子は黄疸の原因となる血中ビリルビンを減少させます。

山梔子の服用方法は
山梔子約5グラム〜10グラム(1個から2個)を水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて
1日数回温めて服用します。
(肝臓疾患に用いる場合は茵チン(※)蒿や柴胡と一緒に服用し、胃疾患に用いる場合は黄連や黄柏と一緒に
服用すればより効果が向上します。)
(※チン=くさかんむり+陳)
(胃腸が弱い人が大量に服用すると胃腸機能を弱める恐れがあります。)

山梔子の粉末の場合
山梔子の粉末を1日2グラムから4グラム(小さじ1杯から2杯)を目安にお湯にて服用します。
(肝臓疾患に用いる場合は茵陳蒿と胃疾患に用いる場合は黄連と一緒に服用すればより効果が向上します。)

山梔子の粉末を湿布薬とする場合
山梔子には消炎、鎮痛作用があり、外部に湿布薬として利用すれば打ち身、捻挫、打撲、腰痛などの
緩和薬として効果があります。

余談・・・打ち身、打撲、捻挫などの炎症を伴う症状にはには3つの兆候があります。
痛み、発赤、腫れが打ち身、打撲、捻挫などに診られる症状です。
一般の湿布薬や塗り薬などの消炎貼付薬は「インドメタシン」が主薬になって配合されていますが、
これは主に「痛み」に効果がありますが、「痛み」と「発赤」は山梔子のほうが優れていると思われます。

適度の山梔子の粉末と同量の黄柏の粉末とと小麦粉と少量の酢を混ぜ合わせて患部に貼ると
良いと言われます。

他に山梔子の粉末と卵白1個と小麦粉と酢を混ぜ合わせて患部に貼っても効果があります。

「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
生薬との組み合わせ 
山梔子+黄連⇒山梔子と黄連を組み合わせることにより心、脾胃、肝の消炎、解熱を促して熱が原因の煩渇
不安焦燥、不眠などの症状が軽減します。
(例⇒ 黄連解毒湯温清飲、荊芥連翹湯、清上防風湯、柴胡清肝湯など)

山梔子+茵チン(※)蒿⇒山梔子と茵陳蒿を組み合わせることにより山梔子の消炎利尿作用と茵陳蒿の
消炎利尿作用が交じり合って体内にあるオ熱を取り去り、オ熱が原因の煩悶と黄疸を治し、肝臓の解毒機能を
高めて肝炎、肝硬変を治療したり、肝臓の機能低下による身体の痒みを鎮めたり、胆のうからの胆汁分泌を
促進させます。
又、体内に停滞している熱を利尿作用により体外に排泄させて肝臓や胆のうの炎症も治療します。
(例⇒茵チン蒿湯茵チン五苓散など)


山梔子+黄柏⇒山梔子と黄柏を組み合わせることにより消炎、解熱を促して胃内停水、尿量減少、打撲、打ち身、
捻挫などの症状が改善します。
(例⇒ 黄連解毒湯温清飲、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯など)


山梔子+柴胡⇒山梔子と柴胡を組み合わせることにより胆のう、肝臓の解熱が促され胆のう炎、肝炎などの
症状が改善されます。

(例⇒ 加味逍遙散、加味帰脾湯、柴胡清肝湯など) 
山梔子を含む漢方処方
茵チン蒿湯
茵チン五苓散
加味逍遙散
温清飲
黄連解毒湯
柴胡清肝湯
荊芥連翹湯
加味帰脾湯
清上防風湯
清肺湯
防風通聖散
など
参考資料
神農本草経ー中品
枝木。一名木丹。味苦寒。生川谷。治五内邪氣。胃中熱氣。面赤酒皰。鼻。白癩赤癩瘡瘍。

薬徴
主治心煩也。旁治発黄。

古方薬議
味苦寒。胸心、大小腸ノ大熱、心中ノ煩悶ヲ療シ、小便ヲ通ジ、五種ノ黄病ヲ解シ、大病、労復ヲ起コスヲ治ス。

名医別録
目赤熱痛、胸心、大腸、小腸ノ大熱、心中煩悶ヲ療ズ
その他
クチナシの学名は「Gardenia jasminoides Ellis」と言い、クチナシの花の香りがジャスミンの
ようなので「asminoides」と言われます。
参考文献
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑
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