乙字湯(オツジトウ)
生薬構成
当帰 6.0  柴胡 5.0  黄ゴン 3.0  甘草 2.0  升麻 1.5  大黄 1.0

(原南陽創作の乙字湯・・・柴胡 2.5g、黄ゴン 2.5g、升麻 1.5g、大棗 1.5g、大黄 1.5g、甘草 1.0g、生姜 1.0g)
乙字湯原文
【叢桂亭医事小言】

理痔疾、脱肛痛楚、或下血膓風、或前陰痒痛者

諸瘡疥、禁洗傳之藥、下部瘡疥最忌之、誤枯藥洗傳頓愈、後上逆欝冐如氣癖、繊憂細慮、或如心氣不定者、并主之、而灸長強、膓風下血、久服無効者、
宜理中湯。

【勿誤薬室方函】 

本有大棗、今代似當歸、更効

【勿誤薬室方函口訣】 

此方ハ原南陽ノ經驗ニテ、諸痔疾脱肛、痛楚甚ク、或ハ前陰痒痛、心氣不定ノ者ヲ治ス。南陽ハ柴胡、升麻ヲ升提ノ意ニ用タレドモ、
ヤハリ濕熱清解ノ功ニ取ルガヨシ。其内、升麻ハ古ヨリ犀角ノ代用ニシテ止血ノ効アリ。此方甘草ヲ多量ニセザレバ効ナシ。
乙字湯解説
この漢方処方は叢桂亭医事小言に見られ、一般的な痔、脱肛、痔出血、女性器の痒みに効果があります。皮膚病の患者に間違った皮膚治療をして、
神経症、神経質な性格なった人にも効果があります。と叢桂亭医事小言には記載されています。

余談・・・「奥の細道」の作者として有名な松尾芭蕉も痔に苦しんでおり、現存する彼の手紙には
「持病、下血などたびたび、秋旅、四国、西国もけしからずと、先おもひとどめ候。」
(痔と出血がひどくて四国や西国には何時行けるか分かりません。)と書いています。

さらに松尾芭蕉は痔の苦しみを奥の細道にこんな句にして残しています。
「持病さへおこりて、消入計(キエイルバカリ)になん。」(奥の細道)

余談・・・・「痔」の漢字を分解してみると「ヤマイダレ」+「寺」と書きます。
これは痔という病気はお寺のお世話、つまり死ななきゃ治らない病気と考えられたので、この漢字が使われたと言えます。

勿誤薬室方函口訣にはこの漢方処方は原南陽の処方で、各種痔疾患、脱肛、痔の痛み、女性器の痒み、神経症状に効果があります。

原南陽は柴胡、升麻を升提の意味で用いたけれど、湿熱を取り除く作用の方が強いと思われる。
昔から升麻は犀角の代用品で止血作用があります。乙字湯に配合されている甘草の量を増やさなければ効果はありませんと記載されています。
犀角とは中央アジア、アフリカなどに生息するサイの角で、解熱、解毒、止血剤として使われました。
(現在はワシントン条約で輸入、使用が禁止されています。)

乙字湯は叢桂亭医事小言では上記に記載しているように大棗、生姜を含んでいます。
しかし、現代最もよく使われている乙字湯には大棗と生姜が無く、当帰が含まれています。
この処方は浅田宗伯が創作した処方です。
当帰には滋潤、鎮痛、駆オ血作用があり、痔核に用いる処方には殆ど含まれています。
又、柴胡と升麻を含んだ処方は、筋肉が緩んだ症状、つまり脱肛を升提する意味で用います。(例:乙字湯、補中益気湯など)

もし便秘が無い、乙字湯服用後に下痢、軟便が見られるようなら大黄を減らすか取り除きます。出血がひどい場合はキュウ帰膠艾湯、温清飲を用います。

勿誤薬室方函口訣にも書かれているように甘草の量を増やしても良いでしょう。
傷寒論、少陰病篇に「少陰病,二三日,咽痛者,可与甘草湯。」「少陰病期で咽喉が痛ければ甘草湯が効きます。」と記載しています。

甘草湯は甘草しか処方しておらず、甘草には鎮痛作用があり、咽喉に限らず他の場所の痛みに良く効きます。
他に甘草を煎じて、煎じた液体を布に濡らして患部に温湿布する方法もあります。
これを忘憂湯と言います。
甘草のほかに鎮痛剤として乳香を加える事もあります。

参考・・・大塚敬節先生は乙字湯より大黄を取り、牡丹皮、桃仁、ドクダミを加えます。
大塚敬節先生の書物によると「痔核をオ血とみて、駆オ血作用のある桃仁、牡丹皮を加え、ドクダミには緩下作用と止血作用があるので加える。」と
書かれています。

「叢桂亭医事小言」には甲字湯(こうじとう)、乙字湯(おつじとう)、丙字湯(へいじとう)、丁字湯(ちょうじとう)など十干の文字をつけた漢方処方が
記載されています。
乙字湯適応症
@ 証は実証から中間証が適応証です。

A あまり出血が多くない場合に良いでしょう。(出血がひどい場合はキュウ帰膠艾湯、温清飲)

B 上記で記載したように一般的な痔疾患に用います。

C この処方は大黄が配合されているので普段からお通じが良い場合、長期服用の場合に軟便、下痢便などの症状が出る場合が
ありますので注意が必要です。
また場合によっては大黄の分量を減らすか、取り除いてもよいでしょう。

D 以上の症状から乙字湯の適応症は
  ・痔疾患
  ・痔の痛み、痒み
  ・出血、出血予防
  ・肛門裂傷
  ・脱肛
  ・女性器の痒み、痛み
などに適応されます。
各種生薬の役割
乙字湯に含まれる当帰には滋潤、鎮痛、駆オ血作用があり、柴胡は升麻と組み、升提と下焦の湿熱を取る作用があり、黄ゴンは裏熱を取る作用があり、
甘草も当帰と同じく滋潤、鎮痛作用があります。大黄は消炎作用と便秘解消作用があります。
参考処方
実証・・・・大柴胡湯、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯など

中間証・・桂枝茯苓丸料、温清飲など

虚証・・・・補中益気湯、当帰芍薬散、帰耆建中湯、キュウ帰膠艾湯など

証に関係なく・・・甘草湯(忘憂湯)、紫雲膏
乙字湯の服用方法
煎じる乙字湯の服用方法
煎じる乙字湯の服用方法ですが1日分(1袋)をアルミ鍋又はガラス鍋、ヤカンに入れて、そこに水600ccを入れます。
水と煎じ薬が入った容器を弱火で約30分ほど煎じます。
煎じ終われば漢方薬が入った袋を取り出してから滓を漉し、1日3回、出来れば人肌程度の温かい煎じ液を食前(食事の60分前)又は
食間(食事と食事の間、食後約2時間)に服用してください。
(漢方薬によっては冷たくして服用する場合もあります。胃腸の調子が良くない場合は食間服用をおすすめします。)
「味が苦手」、「飲みにくい」場合は蜂蜜などの甘味料を加えても結構です。

一般医薬品や医師より処方された薬を服用されている場合は60分以上間を空けてから服用してください。

粉末の乙字湯の服用方法
粉末の乙字湯の服用方法ですが1日分(3包)を1回1包づつ食前(食事の60分前)又は食間(食事と食事の間、食後約2時間)に
水又はぬるま湯にて服用してください。
(出来ましたら熱湯に粉末を入れて漢方薬を溶かして、人肌程度の温度になった漢方薬配合の液体の服用をおすすめします。)
「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
注意事項
下記の人は絶対服用しないでください。
@ 生後3ヶ月未満の乳幼児には絶対服用させないでください。

注意事項ですが
(1)・・・次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談すること
@・・・血圧の高い人又は高齢者。
A・・・心臓又は腎臓に障害のある人。
B・・・むくみのある人。
C・・・今までに薬により発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人。
D・・・妊婦又は妊娠していると思われる婦人。
E・・・医師の治療を受けている人。

(2)・・・服用に際して、次のことに注意すること
@・・・定められた用法・用量を厳守すること。
A・・・小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させること。
B・・・煎じ液は必ず熱いうちにかすをこし去ること。
C・・・本剤は、必ず1日分ずつ煎じ、数日分まとめて煎じないこと。

(3)・・・服用中又は服用後は、次のことに注意すること
@・・・本剤の服用により、発疹・発赤、かゆみ等の症状が現れた場合には、服用を中止し、医師又は薬剤師に相談すること。
A・・・本剤を服用することにより、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状が現れた
場合には、服用を中止し、医師又は薬剤師に相談すること。
B・・・ 1ヶ月位服用しても症状の改善が見られない場合には、服用を中止し、医師又は薬剤師に相談すること。
C・・・長期連用する場合には、医師又は薬剤師に相談すること。

(4)保管及び取り扱いの注意事項
@・・・本品は天然物(生薬)で性質上吸湿しやすいものがあります。そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する
原因になることがあります。

A・・・開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。

B・・・本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、食べたりしないようにご注意ください。

C・・・幼児の手の届かない所に保管してください。

D・・・他に容器に入れ替えないで下さい。(誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。)

E・・・煎じ液は腐敗しやすいので、冷暗所又は冷蔵庫等に保管し、服用する時にに再加熱してから服用してください。
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