黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)

生薬構成

芍薬 6.0  桂枝 4.0  大棗 4.0  黄耆 4.0  甘草 2.0  生姜 1.0  膠飴 20.0

黄耆建中湯原文

【金匱要略】 (血痺虚労病篇)

虚労裏急、諸不足、黄耆建中湯主之。
(於小建中湯内加黄耆一両半、餘依上法。気短胸滿者、加生姜。腹滿者去棗、加茯苓一両半。及療肺虚損不足、補氣、加半夏三両。)

【勿誤薬室方函口訣】

此方ハ、小建中湯ノ中氣不足、腹裏拘急ヲ主トシテ、諸虚不足ヲ帶ル故、黄耆ヲ加ル也。仲景ノ黄耆ハ、大抵表托止汗
{キョ★(コロモヘン+去)}水ノ用トス。此方モ外體ノ不足ヲ目的トスル者ト知ルベシ。
此方ハ虚勞ノ症、腹皮背ニ貼ズ。熱ナク咳スル者ニ用ト雖、或微熱アル者、或汗出ル者、汗無キ者、倶ニ用ユベシ。外臺黄耆湯ノ二方、
主治、藥味、各少シ異ナリ、亦皆此方ニ奴屬ス。{★は(キョ、そで)と読みます。}


黄耆建中湯解説

この漢方処方は金匱要略に見られ虚労すなわち元気が無く、疲れやすい人が裏急(腹痛、腹満)やもろもろが不足している場合に
服用しなさいと記載されています。

勿誤薬室方函口訣には小建中湯証で疲労倦怠し、裏腹に拘急があり、全般的に虚証体質に黄耆を加えた処方です。
元々黄耆には止汗作用があり、本方も体液欠乏者に用います。

黄耆建中湯は虚労証で腹部は張りがあるが軟弱な場合があり、熱無く咳がある者、微熱がある者、汗がある者、汗は無い者など
どんな場合でも用いてよいでしょう。

黄耆建中湯は小建中湯に黄耆を加えた処方で、小建中湯を用いる症状は、虚証体質で胃腸虚弱、腹痛、腹の張り、手足煩熱、
口内乾燥、小便自利などがあります。
黄耆の効能は止汗、利尿、化膿止め、強壮などの作用があります。
つまり本方は小建中湯証より体力が無く、盗汗、自汗、腹痛、皮膚疾患などの症状がある場合に用います。


黄耆建中湯適応症

@ 少陰病の体質で虚証の場合が多いです。

A 小建中湯を服用する体質より虚証を帯びている場合に用います。

B 症状は小建中湯と同じく盗汗、自汗、腹痛、倦怠感、小便自利の症状改善効果と止汗、利尿、化膿止め、強壮などの黄耆の
症状改善効果が期待できます。

C 以上の症状から黄耆建中湯の適応疾患は
  ・虚弱者の体質改善
  ・夜尿症
  ・病後の体力回復、貧血
  ・各種痔疾患
  ・慢性中耳炎
  ・化膿性皮膚病、化膿性湿疹、アトピーなどに適応されます。


各生薬の解説

黄耆建中湯を構成しているのは小建中湯と黄耆です。
小建中湯の「中」は中焦すなわち胃腸を意味し、「建」は立て直す事を意味し、胃腸を立て直す処方として用いられています。
小建中湯は桂枝湯中の芍薬の量を増やし、膠飴を加えた処方です。芍薬には腹部の膨満感、腹痛の解消、攣急の緩和作用があり
膠飴、大棗は滋養強壮作用があり、桂枝は理気剤の効があり、甘草は鎮痛作用として痛みを抑え、生姜は健胃剤として胃機能向上
が期待できます。
最後に黄耆を加えることにより、止汗、利尿、化膿止め、強壮などの作用が加わります。


参考処方

虚証・・・・小建中湯、補中益気湯、四君子湯、十全大補湯など
Copyright(C)2004 yanagidou All Rights Reserved.