甘草湯(カンゾウトウ)

生薬構成

甘草 8.0

甘草湯原文

【傷寒論】 (辨少陰病脈証并治)

少陰病,二三日,咽痛者,可与甘草湯。不差者,与桔梗湯。

【勿誤薬室方函口訣】

「此方モ亦其ノ応用広シ。第一咽痛ヲ治シ、又諸薬吐シテ納マラザル者ヲ治シ、又毒薬ヲ解シ、又蒸シ薬ニシテ脱肛痛楚ヲ治シ、
末ニシテ貼スレバ毒螫竹木刺等ヲ治ス。」


甘草湯解説

この処方は傷寒論に書かれており別名で独勝散(ドクショウサン)、忘憂湯(ボウユウトウ)と言います。

傷寒論では「少陰病で2、3日咽喉が痛む人には甘草湯を服用させなさい。これで効果が無ければ桔梗湯に変更しなさい。」と
書かれております。
傷寒論では少陰病の体質の時に服用するようになっているが、少陰病(新陳代謝の低下、手足の冷え、生気が低下しているなど)
の病状ではない時でも服用もできるますし、虚証、実証も関係なく服用できます。他に温湿布としても利用も出来ます。

勿誤薬室方函口訣では「甘草湯は応用範囲が広い漢方処方で第一に咽頭痛を治し、嘔吐があって薬の服用が出来ない者を治し、
毒薬を解毒し、脱肛や痔の痛みの緩和を図り、甘草を粉末にして患部に貼れば虫さされ、植物のかぶれなどを治療します。」
と書かれています。

甘草湯は漢方薬としては珍しい甘草単味の処方で、主として頓服薬として用い、長期服用は少ない漢方処方と言えます。

甘草湯は気逆が原因の痙攣や筋肉の攣縮、炎症や腫脹などが原因の痛み、急迫的な痛みなどを治療します。

甘草は補気薬として用いられます。
薬徴によると
「甘草、急迫ヲ主治ス。故ニ厥冷、煩躁、吐逆、驚狂、心煩、衝逆等諸般ノ急迫ノ証ヲ治ス。兼ネテ裏急、攣急、骨節疼痛、咽痛、下利
ヲ治ス。」と記載されています。

原南陽は甘草湯を忘憂湯と言い、その理由として甘草湯の効き目に即効性があるので「憂いを忘れる」と言う意味で
忘憂湯(ぼうゆうとう)と名づけました。
原南陽の忘憂湯についての記載として
「諸急痛スル者ヲ治ス。眼胞熱腫、前陰腫痛、或ハ痒ヲ為ス、又湯火傷モマタ洗フベシ。」と記載されています。

甘草湯の服用方法として煎じた甘草湯を口の中に含んで少しづつ咽喉を潤すように飲むと良いでしょう。
痔の痛みには服用するのと同時に煎じた温かい液体をガーゼに染み込ませて患部に当てると痛みが和らぎます。


甘草湯適応症


以上の症状から甘草乾姜湯の適応症は
・咽頭痛、咽喉の痛み、口内炎

・激しい咳

・腹痛

・イボ痔、切れ痔などの痔の痛み、脱肛、会陰部の痛み

・打ち身、捻挫
などに用いられます。


各生薬の役割

各生薬の役割としてこの処方は甘草一味で構成されている大変珍しい漢方処方です。

甘草は肺を潤す作用があり咳嗽や喘息の症状緩和が期待できます。他に痙攣防止や痙攣を取り除いたり、痙攣の痛みを
緩和させる作用もおります。
一番の甘草の役割として色々な生薬の効能効果の調和を図ったりする作用もあります。(特に乾姜や附子、石膏、大黄、芒硝
などの大熱薬や大寒薬、下剤と言われる生薬の効能効果を和らげるために一緒に配合されます。)

甘草配合の漢方処方をいくつも摂取(甘草の大量服用)する事により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。
これを「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。
ですので甘草を含む漢方処方の併用には注意が必要です。


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